働く広場2021年4月号
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働く広場 2021.4持った管理職を置き、「はたらく応援室」を拠点にフォロー体制を整えた。総務係長で、はたらく応援室の室長を務める佐さ藤とう弘ひろ美みさんは、入社2年目の2006年に企業在籍型ジョブコーチの資格を取得。日ごろは障害者や支援者の相談、現場から上がってくる課題対応について定期的なケース会議を行い、必要に応じて佐藤さんたちも現場の応援に入る。会議は、専任支援者やエルチャレ、場合によっては障害者就業・生活支援センターの担当者も加わる。「なるべく多くの目で見守ることを心がけている」という福田さんは、「本人も相談先を自由に選べるよう、支援者、本社、エルチャレや障害者就業・生活支援センターの窓口を示しておき、ていねいな連携で、風通しのよい職場環境を目ざしてきました」と説明する。さらに福田さんは「大阪府の総合評価入札制度にも育てられた」と語る。大阪府の総合評価は、雇用率はもちろん、支援者の置き方や生活支援、通勤方法といった雇用環境についても細かい質問項目が設けられている。その内容も障害者にかかわる法律に合わせて年々変わるそうだ。「入札のたびに、支援方法についてのいろいろな提案を求められますが、逆に私たちも『こういう支援や配慮も必要なのだな』と勉強させてもらっています。新しい知識や考え方を得る意味でも素晴らしい制度だと思っています」 美交が2011年から業務を受託している大阪府立大学(以下、「府立大」)の中なか百もず舌鳥キャンパス(大阪府堺市)を見学させてもらった。ここで清掃作業に従事するのは約30人。そのうち知的障害のある5人の方を訪ねた。ちなみに5人は、美交の前に所属していた企業からの期間を含めると、府立大での就労が10年以上になり、2020年には、5人全員が大阪府知事表彰を受けた。1日のスケジュールは、午前中はそれぞれキャンパス内のトイレなどを清掃して回り、午後は5人が一緒に屋外の除草回収作業などを行う。5人の担当場所や清掃手順などは、ラミネート加工されたA4サイズの表に、写真つきでわかりやすくまとめられている。午前9時~正午までの3時間で約12カ所のトイレを1人で掃除するのはなかなかハードだ。「5人とも頼もしい働きぶりなんですよ」と話すのは、専任支援者を務める谷たに本もとさゆりさん。8年前に入社後、すぐに一般社団法人大阪ビルメンテナンス協会主催の「障がい者雇用支援スタッフ養成講座」を受講し、おもに5人の支援を任されている。「一人ひとりの性格や特性をしっかり理解したうえでないと支援もうまくいかないと思い、自分なりに自信が持てるまで時間はけっこうかかりました」と明かす。いまは「ベテランさんでも手順などを忘れることがあるので、見回りながらこまめに確認しています」という。自転車のかごに掃除用具を載せ、自分の担当する作業をこなしながら、広いキャンパス内を縦横無尽に回っている。谷本さんと同様に自転車で回る古ふる殿どの世せ津つ子こさんは、もともとパート従業員のまとめ役だったが、数年前に障害者職業生活相談員の講習を受け、谷本さんの補助大阪府立大学で清掃業務大阪府立大学中百舌鳥キャンパスでの除草作業作業スケジュールには、作業内容が写真つきで記載されている社会参加への努力が模範になる者として大阪府立大学で働く5人が令和2年度「障がい者週間知事表彰」を受けた(写真提供:株式会社美交工業)6

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