働く広場2021年5月号
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働く広場 2021.5 親会社である富士ソフトの本社ビル内にある横浜オフィスでは、2015年から社員向けのマッサージ事業も行っている。ヘルスキーパー(企業内理療師) によるマッサージ、鍼はり、フットマッサージを1回40分、各2千円で受けることができる。チラシは外国人社員用に英語版も用意されている。ここでヘルスキーパーを務める町まち田だ宣のぶ和かずさん(44歳)は、2020年12月の入社だ。横浜訓盲学院理療科を卒業し、マッサージ・鍼灸師として長年働いてきた。しかし訪問型だった前の職場ではコロナ禍で仕事ができない状況となり、「新しい仕事を探してみよう」とハローワークに。そこで富士ソフト企画が、前任者の定年退職にともなう求人を出していたのを見つけた。町田さんは、面接のときの対応が印象に残っているという。「会場内で移動するときに、すっと手を差し出して肘ひじにつかまるよううながしてくれ、『ここに椅子があります。背もたれもありますよ』などと細やかにいってくれたのが、とても自然で、ここなら安心して働けると感じました」日ごろは、パソコン業務による肩こりなどを訴えてくる社員が多い。町田さんは「ここで他愛のない会話で気分転換したい人もいますし、静かにマッサージを受けたい人もいます。一人ひとりの様子を感じ取りながら、少しでも癒いやしの時間になるように心がけています。最後に『気持ちよかった』といってもらえるのがなによりです」と語ってくれた。町田さんは毎月、親会社を含めた社内のイントラネットにコラムを載せている。イラストはDTPを担当する障がいのある社員が描いているそうだ。 社内では障がいのある社員を含む6人の企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)が活躍している。今後はさらに、企業在籍型ジョブコーチを増やす方針である。定期的に行っているジョブサポート会議では、個別のサポート事案などをじっくり話し合い、検討している。さらに月1回オンラインでのカウンセリング会議には管理職30人ほどが集まり、社長も参加して情報共有をしている。同じメンバーで業務内容を確認する幹部会議も月2回行われ、互いに相談しやすい機会となっている。職場全体での目下の課題について聞いたところ、「アンガーマネジメント(※)を含むメンタル面での支援」だという。遠田さんは「精神障がいのある方の場合は、薬の副作用による体調の波もありますが、日ごろから、いかに感情のコントロール法を身につけてもらうかが大事です」と話す。精神的に不安定になると、周りの人のことが気になってしまう傾向があるという。社員には「まず自分の体調を安定させること」、さらに「本能を抑え、理性をきたえる」ことをうながしている。「人はだれしも心身のバランスが崩れると、本能が先に出て、例えばアルコールに依存したり食べ過ぎたり、朝起き上がれなかったりすることもあります。そこを『飲み過ぎたら明日の仕事に響く』とか『起きて電車に乗らないと働けない』といった理性的な行動に結びつけるよう努力してもらっています」社員たちは朝礼や昼礼の際などに1分間スピーチで、その日の自分の体調や、自己コントロールのための工夫や情報も共有するようにしている。週末の過ごし方を日報に書いてくれる社員もいる。「私生活が乱れると、どうしても仕事に影響が出ます。休日など勤務時間外の過ごし方によって勤務態度にも変化が見られるため、趣味や運動習慣などについて教えてもらい、プライベートも充実させるように働きかけています。また、薬の副作用と闘いながら通勤をしている社員もいるため、通院休暇を付与するなどの配慮もしています」ヘルスキーパーの活躍メンタル面の支援ヘルスキーパーの町田宣和さんマッサージルームでの施術の様子。社員からの評判も高い※ アンガーマネジメント:怒りの感情を適切にコントロールするための心理トレーニング8

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