働く広場2021年5月号
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働く広場 2021.5社員には、植物や動物を可愛がることもすすめている。職場でも、遠田さんが飼っている猫についての情報を紹介したり、アニマルセラピー協会から犬を派遣してもらったりして、ちょっとした癒しの時間をつくっているそうだ。富士ソフト企画は2013年から、親会社の社員を対象にした「リワーク」事業も始めている。これは、うつ病などで1年間休職した社員が復帰する前に、富士ソフト企画の職場で2週間ほど働いてもらうという内容だ。「当時、親会社にはうつ病と診断された社員が100人近くいました。同じような疾患を抱えながら富士ソフト企画で働く社員の様子を見た人事部と産業医から相談されたのがきっかけです」と遠田さんが説明する。リワーク中の社員は、自分のスキルを富士ソフト企画の社員や就労支援プログラムを受けている訓練生に教える。そうすることで以前の仕事の感覚やリズムを思い出し、富士ソフト企画の社員や訓練生たちは営業や開発の業務について学ぶことができるという。さらに、自分の人生についてパワーポイントなどを使い発表してもらう時間もある。富士ソフト企画の社員からいろいろな質問を受けながら自分を語ることで、カタルシス効果=心の浄化作用もあるという。遠田さんは「障がいのある社員たちが、とてもよく話を聞いてくれるのです。彼らは天性のカウンセラーだと思います」と明かす。これまでに親会社の93人がリワークを利用し、62人が無事に復職を果たした。遠田さんは「リワーク事業によって、親会社と特例子会社の社員たちがお互いの現場のことを知り、相互理解を深める絶好の機会にもなりました。社内のダイバーシティが促進されていくきっかけにもなります」と手ごたえを語る。コロナ禍の対応についても教えてもらった。富士ソフト企画では、2020年4月の1回目の緊急事態宣言で5割を在宅勤務にした。なかには体調を崩したり、パソコン環境が整わなかったり、家庭の事情で在宅勤務が困難になる人も出てきたりしたという。そこで今年1月の2回目の宣言時は、在宅勤務は、可能な人や基礎疾患のある人など、3割に減らし、感染予防対策を徹底したうえで7割が出勤となった。「せっかく引きこもりから脱することができた人が、再び引きこもる恐れがあるので、慎重な対応が必要です」と遠田さん。いまは時差出勤も含め定期的に交代で週2回ほど出勤してもらうほか、通常勤務に戻ったときに通勤できなくならないよう、暴飲暴食や運動不足などについても注意をうながしている。近年は、社員が外部の講演会などにも参加して経験を語り、障がい者雇用の理解を広げるために一役買っている。また、精神障がいのある人が多く働く職場ということで、JICA(国際協力機構)や外務省の紹介で中東諸国など海外からの見学者も増えているそうだ。戦争による身体の後遺症やPTSD(心的外傷後ストレス障がい)などに苦しむ人たちが働きやすい職場のためのアドバイスを求められるという。遠田さんが話す。「精神障がいのある人は日本社会でも増えています。私たち企業側は、働き方改革も含め、障がいのある人もない人も長く安心して働き続けられる職場づくりを、さらに充実させていかなければと強く感じています。すべてお膳立てするのではなく、『自分たちの職場は自分たちが創る』という気概が職場定着にもつながると考えます。そのためにも障がい当事者の管理職を育成し、自分で考え、判断して動ける企業の風土づくりも大切だと考えています」親会社の休職社員の﹁リワーク﹂事業も海外からも見学者町田さんが毎月書いているコラム。DTPを担当する社員がイラストを描いている(提供:富士ソフト企画株式会社)多方面からの見学や講演、セミナーを受託している(提供:富士ソフト企画株式会社)9

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