働く広場2021年5月号
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働く広場 2021.5高橋 悠(たかはし ゆたか) 行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼19 就労継続支援事業所や就労移行支援事業所においてもこの動きは活発になってきており、特に地方で積極的に導入している事業所が多く存在しています。 農福連携を行うことで、「事業所」、「農家」、「利用者」、それぞれに次のような大きなメリットが存在します。◯事業所にとってのメリット・農産物の加工・販売による工賃収入の確保ができる・利用者の一般就労に向けた職業訓練を行うことができる◯農家にとってのメリット・遊休地となっている田畑の有効活用につながる・農作業にあたっての労働力や従事者の確保につながる◯利用者にとってのメリット・農業活動に従事することで身体面や精神面にプラスとなる・早寝早起きを習慣づけることで、生活習慣の改善につながる  農福連携といってもその事業展開の形態はさまざまで、例えば耕作放棄地や使われていない農地を有効活用する形で展開したり、過疎化が進む地方の 障害者の就労の場を提供している「就労継続支援事業所」、「就労移行支援事業所」においては、自らの事業所を選択してもらえるよう、各事業所において賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。 今回も、こうした事業所の取組みの一部をいくつかご紹介していきます。 近年、福祉業界では「農福連携」という言葉を耳にします。 「農福連携」とは障害者が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していくことを目的とした取組みのことであり、農林水産省が推進している事業をさします。 日本では、近年、高齢化と人口の減少によって農林水産業にたずさわる人が減少しており、耕作放棄地や農業のにない手不足といった深刻な問題を抱えています。一方、福祉分野でも、障害のある方々の働く機会が求められています。こうした双方の抱える問題を解決するため、農福連携は大きな期待を寄せられています。地域で牧場やレストランを運営し、そのホールスタッフやビール製造、家畜の世話などを障害者に行ってもらったりするという形などが存在しています。 また、特に都市部においては農地確保がむずかしいため、LED照明を活用した水耕栽培の野菜を障害者が事業所内で育て、その野菜を併設のカフェレストランで素材として提供する、といった先進的な取組みが行われている事業所もあります。 農福連携は、新しい障害者の就労の形態であると同時に、特に地方において障害者が身近な存在であることを知ってもらうという意味で大きな意義があると考えます。 しかし、まだまだ農福連携の事例の周知や事業モデルの構築が必要であり、また障害福祉サービス事業所や障害者に農業を教えることのできる指導者などの人材の育成も必要であるなど、課題は多く存在しているのも現状です。 農福連携がより民間に周知されていき、また活用を行う就労継続支援事業所や就労移行支援事業所が増えていくことで、事業所の工賃収入確保のための新たな可能性となっていくことを個人的に期待しています。【第3回】就農支援や農作業による生産活動の機会の創出障害福祉サービスの現場から

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