働く広場2021年5月号
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が当時の経営判断でした。障がいのある社員を雇用する場合、雇用というアウトカムだけに目を向けがちですが、雇用するためにはまず、業務の創出が必要です。人に合わせて仕事をつくるというのは、とても大切な考え方だと思っています。障がいのある方の雇用はできる、というのが大前提です。売り上げと利益は、もちろん企業の使命です。障がいのある社員とそうでない社員が、チームとしての成果を出す職場であり続けるためには、新たな業務を創出するという工夫をし続ける必要があります。仕事をクリエイトするというのは、とてもチャレンジングなことです。クリエイティブさを追求する業務創出というのは、障がい者雇用のプロセスのなかでも、極めて重要な視点だと思っています」 会社の合併は、すなわち障がい者雇用と一般雇用の合併という抜本的な改革といえるのではないだろうか。こうした合併の背景の一つには、次に挙げる定型業務の自動処理化(RPA)が含まれているようだ。 RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、「従来は人の手で行っていた定型業務を、ロボットに自動処理してもらう仕組み」のことである。情けないが、私はこのときまでRP体の障がい者雇用率は2・98%(障がい者数519人)とのことで、この春から新たに設定された法定雇用率2・3%をクリアしている。社員の障がいを種別で見ると、精神障がい者235人、知的障がい者64人、身体障がい者220人となっている(2021年2月取材時)。現在、大東コーポレートサービスに勤務する社員約400人のうち、障がいのある社員は94人である。 インタビューが始まり、いきなりちょっと不ぶ躾しつけかなとは思いながらも、社長の福田さんのお考えをストレートにお聞きしたかったので、私は会社の理念をたずねた。すると、「新しい仕事を創り出すことです」との明確な答えが返ってきた。業務創出。障がいのある社員の特性に見合った新しい仕事を創り出すという考え方は素晴らしい。「人材」というより、人は財産であるという「人財」というキーワードも、会社の理念の一つとされている。障がいの有無にかかわらず、「共に成長することで、豊かな人生を送りながら社会に貢献できる会社を目指します」という企業理念を教えていただいた。これを理念としている福田さんのお言葉を聞いただけで、私は「ああ、もう取材、十分達成かも」という気持ちになっていた。 業務創出。英語でいうとジョブデベロップメント(Job Development)だ。アメリカで障がい者雇用の支援をするジョブデベロッパーのなかには、経営学修士号(MBA)を持つ人もいる。こうしたプロフェッショナルは、「障がい者の仕事がないなら、それを開拓すればいい」という発想を持っている。「新しい仕事を創り出す」という理念は、仕事に人を合わせるのではなく人に仕事を合わせる、ということだ。まず「人ありき」。つまり「ピープルファースト」ということだ。障がい者(the disabled)ではなく、障がいのある人(people with disability)という表現だと、英語の並び方からしても「ピープル」が「障がい」よりも先にくる。障がいを見ずに、人を見る。もし障がいのある社員がうまくその仕事が「できない」のであれば、「できるようにする」。その工夫とは何だろうか。 特例子会社である大東コーポレートサービスは、2016年にシェアードサービス業務を行う大東ビジネスセンター株式会社と合併した。この合併は組織的な工夫の例といえる。しかもかなり大きな決断を必要とする工夫である。福田さんは会社合併という決断についてふり返る。 「会社を合併することによって、グループ全体の生産性を高めていこうというの「できるようにする工夫」 RPA「御社の理念とは何ですか?」大東コーポレートサービス株式会社のオフィスでお話をうかがった働く広場 2021.522

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