働く広場 2021.5ソフトウェア開発やシステム構築などで知られる「富士ソフト株式会社」(以下、「富士ソフト」)は、1970(昭和45)年の創業から昨年で50年を迎え、グループ全体の従業員数は計1万3千6百人を超える。その特例子会社「富士ソフト企画株式会社」(以下、「富士ソフト企画」)が誕生したのは2000(平成12)年。社員12人、うち身体障がい者8人からスタートし、20年を経たいまでは、全社員260人の86%を占める226人が障がいのある社員だ。グループ8社全体の障がい者雇用率は2・51%(2021〈令和3〉年2月1日現在)。内訳を見ると身体障がい44人、知的障がい28人に比べ、精神障がいのある社員が154人と、障がいのある社員総数の約7割を占めているのも特徴だ。精神障がいのある社員を初めて採用したのは、2004年。きっかけについて、企画開発部長兼CSR統括責任者などを務める遠とお田だ千ち穂ほさんが説明する。「当時すでに法定雇用率は達成していましたが、神奈川県精神保健福祉センターから『国立高等専門学校の教員で、統合失調症を患った人を採用してみないか』と提案されました。さらに翌年にはハローワーク経由で、うつ病と診断されていた元証券マンの方を営業職で採用したのですが、2人とも非常に活躍されたことから、その後も積極的に精神障がいのある人を採用してきました」富士ソフト企画は、鎌倉市の大船本社をはじめ、横浜、秋葉原、長崎に営業所を持ち、グループ会社だけでなく一般企業からの業務も請け負う。1人1台のパソコンを持ち、DTP・デザイン、ホームページ制作・管理、各種印刷、データ入力、発送、サーバー管理のほか、保険代理店業務、障害者委託訓練事業、就労移行支援事業、英文翻訳など幅広く手がけている。社員はアビリンピックにも意欲的に挑戦し、2019年度の神奈川県地方大会ではDTP、ワード・プロセッサ、ホームページ、表計算、オフィスアシスタントの種目で6人が入賞した。2016年10月からは、復興支援も含め福島県西会津町で菌床椎茸栽培を始め、現地での障がい者雇用も進めている。大船本社の社員によるIT技術を活用した生産管理で安定した高い生産性を上げ、全国サンマッシュ生産協議会主催の品評会では2015年から6年連続で「金賞」を受賞している。富士ソフト企画は、経営理念に「自立と貢献」を掲げる。現場では「自分たちのことは自分たちで考えて決める」というスタイルを貫き、業務マニュアルなども社員自らの手でつくるようにしてきた。遠田さんは、「職場ではつい、障がいのある人に『なにかしてあげなくては』と気負ってしまうかもしれませんが、『この仕事を一緒にやってもらおう』、『手伝ってもらおう』という姿勢で臨めば、肩の力も抜けます」と助言する。じつは遠田さん自身も、2008年にカウンセラーとして入社し約9割が障がいのある社員障がいのある社員が助け合う★本誌では通常「障害」と表記しますが、富士ソフト企画株式会社様の希望により「障がい」としています異なる障がいの社員が部署内で助け合うことで、個々の成長をうながす親会社の休職社員の「リワーク」事業によって相乗効果もメンタル面のサポートではアンガーマネジメントのほか、プライベートも含めた助言や情報共有を重視123POINT企画開発部長などを兼務する遠田千穂さん横浜オフィスは、富士ソフト株式会社の本社ビル内に設置されている5
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