働く広場2021年6月号
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働く広場 2021.6くことができるので本当に助かります」東京本社から定期的に訪問する谷口さんや茂田さんにも「いろいろ話を聞いてもらえるので、みんな楽しみにしています」と、画面越しの2人に手をふって挨拶していた。今年65歳の定年を迎えるという池いけ田だ直なお子こさんは勤続13年目。下肢に障害を抱え、就労支援事業所でパソコンスキルを学んで入社したそうだ。いまは本社からPDFで送られてくる伝票の読み取りエラーを修正する業務を担当している。池田さんは「手書きの文字を判読するのに苦労することもありますが、一日1500件ほどの修正を無事に終わらせると、大きな達成感が得られます」と語る。この職場のよさについては「サポート社員のみなさんのフォローがいいので、スタッフからも相談しやすい雰囲気ですね」と話してくれた。業務支援課長としてスタッフを支援する大おお湾わん亜あ希き子こさんに、日ごろから心がけていることを聞いた。「日によって、または午前と午後によっても体調が違うので、一人ひとりの状況に合わせて業務を調整しています。あとは、だれかに注意や指摘をするようなときは、あえて周囲に聞こえるように話していますね」というのも、席をはずして別室で話すと、かえって周囲が気にするからだという。「ミスが出たときもその場で指摘することで、周囲のスタッフと情報共有できるし、別のアイデアが出てくることもあります」という。判断がむずかしいケースが出てきたときは、メールなどで谷口さんや茂田さんに相談しているそうだ。東京本社と沖縄オフィスのサポート社員によるオンライン会議も定期的に開催し、互いに職場の工夫や改善点を共有するなど、細やかな情報交換を続けている。 これまで各部署に点在させる形で障害者雇用を進めてきた日本テクノだが、山﨑さんは「今後は、沖縄オフィスのような拠点も必要だと思います」と話す。東京本社内には、郵便物などのデリバリーや事務用品の補充など「各部署に共通する業務」も多いが、集約して作業ができないため、それが雇用の限界にもつながっているという。一方でスタッフのなかには、一般雇用の社員に混じって働きたいという人もいれば、同じ障害のある人たちと一緒のほうが働きやすいという人もいるだろう。「これまで通り、各部署に配属する形とともに、事務センターのような拠点があれば、部署を横断して業務をまとめて引き受けられますし、スタッフの働き方もさらに柔軟性をもたせられるでしょう。結果として、会社全体の業務の効率化につながると考えています」現時点では、物理的な空間の確保が一番むずかしい課題だそうだが、上層部に働きかけながら進めていきたいと意気込む。東京本社での障害者雇用に取り組み始めて4年。以前は、山﨑さんが部署に出向いて「こんな業務ができますよ」と提案していたが、いまは逆に「こういう仕事があるから手伝ってもらえないか」といわれるようになった。「最初はスタッフに声をかけるのも私たちぐらいでしたが、いまはいろんな社員が、いろんな場で気さくに声をかけている様子を見かけます」山﨑さんたちの手ごたえは、会社全体の取組みにも波及しているようだ。「あちこちの部署が障害者雇用にかかわり始めたことで、あきらかに社員の意識は変わったと実感しています。これまでは業種の性格上、環境保護分野に偏りがちだったSDGsの取組みも、ダイバーシティを含めた広がりが出てきているようです。私たちとしては今後も、だれもが働きやすい職場と社会づくりに向けて、できることを少しずつ進めていきたいと思っています」今後は「拠点づくり」も沖縄オフィスでは書類の電子化やファイリングなどが行われている(写真提供:日本テクノ株式会社)9

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