働く広場2021年6月号
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働く広場 2021.6一方で、在宅勤務を実施している企業もありました。しかし、その実態は、テレワークとしての業務が十分に提供されているとはいえない状態であり、課題を自分で学習することを義務づけた自宅待機にならざるを得ない状況があったようです。こうした社員に対して、企業は定時連絡などのマネジメント上の働きかけをしていましたが、社員の一部にはメンタルの不調におちいる人もいたといいます。 これらの結果から、コロナ禍の障害者雇用において、大きく二つの課題が見えてきます。一つめは、図1の職種の分布に則した、それぞれに見合った人材確保の必要性です。新型コロナウイルスの感染拡大が労働市場にもたらした大きな変化のなかで、障害者雇用においても、今後は、テレワークなどの在宅勤務を含めた新しい働き方に対応せざるを得ないことになります。適切なアセスメントとマッチングの重要性もますます高まると考えられます。また一方では、障害のある人自身もそれに応えうるだけの能力が必要になります。そのためには、企業の人材育成にとどまらず、企業に人材を送り出す教育現場での人材育成にも変化が求められることになるでしょう。 二つめの課題は、こうした就業形態にそぐわない現業系の仕事の減少とそれに従事する障害者の処遇に、どのように取り組んでいくかという問題です。雇用する側の企業も、法定雇用率を達成して維持するためには、こうした人材をこれまで以上に雇用していかざるを得ないでしょう。そのためには、技術革新などの成果を取り込みながら、新たな仕事のやり方を生み出す必要性なども高まってくると思われます。 厳しい状況にありながらも、ほとんどの企業は、障害者の雇用を維持することを最優先とし、知見と経験を積み重ね、たくましく、このコロナ禍を乗り切ろうとしている様子がうかがえます。次号からは、今号で提示された課題や今後の展望を、企業・当事者・支援機関の視点で、事例を交えて紹介します。1群は、一般の総合職と同等の業務であり、一定基準の作業遂行能力が必要な仕事です。第2群は、第1群から切り出された業務が中心で、工場ラインや事務センター、特例子会社などで行う仕事に相当します。この仕事に従事する人のなかにはキャリア志向の人も含まれており、スキルアップなどにより第1群への展開制度を設けることが望ましいと考えられます。第3群は、事務所内の清掃や郵便物集配など、現場作業系の業務が中心になります。より手厚い職場定着の支援を必要とするグループです。テレワークの実施が可能な仕事は、このモデルのなかの、第1群や第2群の一部の業務にかぎられます。 図2は、新型コロナウイルス感染拡大による障害者雇用の実際について、特例子会社を中心に行われた調査の結果です。これによると、緊急事態宣言下などの状況でも、8割以上の企業が社員を出勤させる勤務形態を続けており、体調確認、消毒やマスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持などの対策をしながら、業務を継続している例が多く見られました。その0.050.064.164.159.820.72.210.020.030.040.050.060.070.080.090.0100.0%1か 2 のいずれか、または両方に〇印をつけた会社は 83.71.通常通り出勤し稼働している社員がいる2.通常とは異なる形(時差出勤・時短勤務等) で出勤し稼働している社員がいる3.自宅で仕事に取り組んでいる社員がいる (在宅勤務・テレワーク・リモートワーク)4.自宅待機している社員がいる5.休暇を取得している社員がいる6.会社は休業している60.9図2 業務遂行の形態(複数回答)コロナ禍により見えてきた二つの課題とは出典:一般社団法人障害者雇用企業支援協会「緊急事態宣言下における障害者雇用の状況に関するアンケート報告書」、2020年11

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