働く広場2021年6月号
23/36

 その後、岡山県精神保健福祉センターにも勤務することになり、小・中学生の発達障害の治療にたずさわるなかで、もっと早期に、適切な診断をする必要性を感じ、隣接する岡山保健所へ週一回出向いて、児童精神科医の立場で乳幼児の発達相談を始めた。 始めてみると、1歳半、3歳児検診、育児相談など母子保健領域のなかで見落とされていた発達障害や母親が抱えていた問題が、児童精神科医の視点から初めて明らかとなり、整理され解決への道筋が開かれることが認識された。実際、母子相談のなかで、児童精神科医への相談ニーズが最も多かったことが、それを裏づけた。こうして中島さんによる自閉症の早期介入体制構築の取組みが始まった。 その後の社会福祉法人旭川荘での勤務では、発達障害の早期療育、早期支援のあり方について試行錯誤した。やがて、自閉症特性による社会性の問題に焦点を向けることが重要であると気づいたという。早期に障害を診断し、早期に療育を開始する、また療育には家族の理解や対食が売れ、売上高は一日平均1万5千円ほどになるという。地域にあるノートルダム清心女子大学、岡山済生会看護専門学校の学生や職員、周辺の住民らが買いに来てくれる。 3階建ての1階がパン工房、販売コーナー、イートイン。2階がサンドイッチづくりの厨房、3階は封入などパンづくり以外の作業場になっている。 実は、ここは全国でも数少ない発達障害に特化した就労支援事業所。 運営の中心になっているのは「医療法人豊仁会まな星クリニック」。児童精神科医歴45年の大半を発達障害の診断、治療、療育に取り組んできた同法人理事長兼クリニック院長の中なか島しま洋よう子こさんは、岡山大学医学部を卒業と同時に精神神経科を専攻。一般精神科研修のかたわら、岡山大学病院児童外来において、当時はまだ珍しい米国での本格的な研修を受けた児童精神科医に師事した。 「パン工房スピカ」と書かれたドアを開けると甘い香りがしてきた。瀬戸内の魚をフライにしたフィッシュバーガー、直径14センチのメロンパン、桜餅のクリームサンド、北海道産小麦100%使用・無添加の食パン、フランスパンなど売れ筋が並んでいる。 ここはJR岡山駅から歩いて10分のところにある障害者対象の多機能型事業所。就労移行支援(定員14人)と自立訓練(同6人)を実施している。就労移行支援、自立訓練ともに期間は2年が限度で、組み合わせると最長で4年間、18歳から30代の男女が一般就労を目ざした支援・訓練を受けている。 小麦粉をこねる生地づくり、成型、オーブンで焼く作業、サンドイッチづくり、販売などの作業を手分けし、一日60岡山県「スピカ」の取組み働く広場 2021.6岡山市の多機能型事業所「スピカ」の1階にパン工房がある販売コーナーやイートインが設置されている店内工房には大型のオーブンや発酵機などが並ぶまな星クリニックの院長であり、法人の理事長を兼任する中島洋子さん就労支援と医療など新たな分野との連携発達障害のある人の生活におけるソフトスキルと自己理解の向上就労継続支援A型事業所に求められる経営力123POINT21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る