働く広場2021年6月号
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長で岡山県精神科医療センター理事長の中なか島しま豊とよ爾じさんは「発達障害、精神障害のある人の就労はケースワークによって医療、労働、福祉という幅広い機関が連携し、個別支援をすることで実現できているところもあります。受け入れる企業は個々の特性を理解したうえで職場配置し、定着への障害者雇用のノウハウを企業内で確立してほしいです。戦後の大量生産、効率重視から脱皮し、個性や多様性を大事にした働き方改革をお願いしたいのです。私たちも公的病院の責務、患者への社会的使命として取り組んできましたが、まだまだ足りません。みんなが働ける社会へ向けて支援を続けたいです」と話す。 次に、「障害者のつくったクッキーの製造販売で全国展開」、「年商1億3千万円」という滋賀県大津市大たい将しょう軍ぐんの「社会福祉法人共生シンフォニー」が運営する「就労継続支援A型事業所がんばカンパニー」を訪ねた。 工場の玄関を開けると陳列棚にクッキー、パウンドケーキ、シフォンケーキなどがずらりと並んでいる。ココアマーブル、コーヒー、シナモン、チョコチップクッキーなどの定番商品に加え、沖縄黒糖、ミカンの粒の食感がある伊予かん師がやってみるかという投げかけが一致すれば、あとは、遅刻しない、休まない、周囲の人に合わせるなどの基本的な労働習慣を身につけることで、本人に合う職場を選択できるようになります」と説明する。 この病院には発達障害外来があり、成人と高校生を対象に医療機関での就労準備支援プログラムを作成し、福祉・労働機関が行う職業トレーニングの前に訓練・実践体験をする。失敗、挫折を回避しスムーズにステップアップしていくように、7~8人の少人数で就労準備説明会から始める。 このプログラムでの就労準備性チェックは17項目。「朝8時までに起き夜0時までに寝る」、「歯磨き、洗面、髪の手入れ、生活費の管理ができる」などだ。外来の公認心理師、ソーシャルワーカー、作業療法士、デイケアの精神保健福祉士らが支援する。就労準備性のマスターを確認し、障害者職業センター、就労移行支援事業所、就労継続支援A型事業所、ハローワーク、相談支援事業所などと連携し、職業トレーニング、職場選択、就労へとつないで行く。令和2年度は、一般就労が23人(うち障害者枠14人)、就労継続支援A型事業所へ8人、就労継続支援B型事業所へ15人が進み、地域で自立した暮らしをしている。 日本公的病院精神科協会(公精協)会士ら9人のスタッフが専門職の高い観察力とていねいな指導力を発揮しさまざまな問題にも知恵を出し合い、チームで利用者がプログラムをステップアップできるように後押ししている。生活支援員・管理責任者の下しも野の敏とし広ひろさんは「開始3年目から毎年、利用者の定員の半数以上が一般就労し、高い評価を受けています。クオリティーの高いサービス・支援の提供を今後も続けていきたいです」と話す。 社会資源との連携のなかで、スピカは精神科医療機関との連携を重視している。岡山県精神科医療センター、総合病院精神科、精神科クリニックなどを受診する発達障害のケースで、精神的に病状が安定し、働きたいと意欲を示す人たちを受け入れ、就労支援を展開している。 岡山市内では岡山県精神科医療センターなどが中心となり、精神科医療機関が地域で暮らす発達障害や精神障害のある人への就労支援を展開している。 岡山県精神科医療センター院長の来き住し由よし樹きさんは、「社会と折り合って生きている患者さんも多いが、病状、生活が安定すると、社会的自立がゴールになり、就労が大きなポイントになります。なにより本人の働きたいという意思表示と医滋賀県「共生シンフォニー」の取組み「岡山県精神科医療センター」 の取組み働く広場 2021.6岡山県精神科医療センター院長の来住由樹さん日本公的病院精神科協会会長の中島豊爾さん「岡山県精神科医療センター」23

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