働く広場2021年6月号
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事業所として知られ、学びに来る福祉施設関係者は多いが、実は財務に強い経営力を持っていた。中崎さんは「社会福祉法人である私たちは企業のように営業マンを雇い高い営業経費を使うことはできないので、卸として製造で生きて行く道を選びました。福祉の人たちはA型事業所を運営するのなら、経営と労働を勉強し真剣に取り組んでほしいです」という。 また、共生シンフォニーは2014年、大津市一いち里り山やまに自立・生活訓練(1、2年次)、就労移行支援事業(3、4年次)を行う、「くれおカレッジ」を開設した。 1、2年次は算数、国語、パソコン、演劇、美術、書道、体育などの学習、預金口座の管理、ATMの利用、グループに分かれての作業、サークル活動、調理実習、大学生との交流などを通して会話、コミュニケーションなどを体験する。 3、4年次はビジネスマナー、職場見学、軽作業や接客、販売練習をする作業訓練、企業での職場実習を行う。 スタッフは職業指導員、ジョブコーチ、社会福祉士、教員免許取得者ら14人。 「本人が主体的に自分の就労先を選択する、というのが私たちの基本方針です。自分で選んで、自ら意欲的にその仕事を学ぶことによって職業選択のミスマッチが防げます」と、開設から2021(令和3)年3月まで、くれおカレッジ所長を務めた永なが田た義よし人ひとさんはいう。ハローワーク手袋姿の人がクッキー、パウンドケーキ、シフォンケーキづくりに励んでいた。平均年齢は35歳、平均勤続年数は10年、長い人は20年近い。工場には冷凍庫、オーブン、ステンレスの作業台が設置され、そばにバター、小麦粉、牛乳、卵などの材料が置かれている。 勤務時間は4~8時間。体力、能力によって分かれる。柴しば田た洋ひろ美みさんは24歳。養護学校を卒業し職場見学、実習を経て就職し、勤続6年目になる。焼き菓子フロランタンの表面にアーモンドの入ったカラメルを塗っていく工程を担当している。「いまは自転車で通勤し5時間勤務です。楽しい職場です」と話す。 2015年、中崎さんから、がんばカンパニー施設長を引き継いだ水みず野の武たけしさんはいま、インターネット通販、さらに企業から製造を受託しその会社のブランドで販売する製造委託を進め、コロナ禍でも売上げが維持できるように奮闘している。 「小売り店の売上げが低迷したため、製造卸の私たちの事業所は、製造受託で工場をフル回転させ、生産技術で利益を確保するように取り組んでいます」 菓子メーカーの競争のなかで揉まれながら、収益部門に受託生産を導入し、構造を変える対応をし、人件費の財源確保に力を注いでいた。 がんばカンパニーといえば、商品開発と販路を全国に展開した就労継続支援A型味などご当地ブランドもあり、約50種類ものクッキーなどが並ぶ。最初はオーガニック、国産食材で注目されて自然食品店で都市圏に広まり、いまは全国20都府県のデパート、スーパー、食品店で販売し、好評を得ている。各地の福祉施設と共同企画し、原価製造で協力するなど精力的に商品開発、販売網の拡大に取り組んでいる。 元々は、1986(昭和61)年に、小規模作業所「今日も一日がんばった本舗」として始まった。設立者は、重度の脳性麻痺のある門かど脇わき謙けん治じさん。車いすに乗った身体障害者が信しが楽らき焼やき、お茶などを売って回ったそうだ。 6年後、現「社会福祉法人共生シンフォニー」常務理事のである中なか崎ざきひとみさんが中心になり、クッキーの商品化に乗り出す。無添加、無農薬の材料を用いるという環境・健康路線が若いお母さんたちに支持され、売上げを伸ばしていった。1995年には、小規模作業所だったが、利用者と雇用契約を結び、全国でも先駆的取組みとして注目された。2008年、「就労継続支援A型事業所がんばカンパニー」になった。「働く人のために、ちゃんとした組織にしたいという思いがあり、雇用契約を結ぶ作業所から就労継続支援A型事業所へと進めました」と中崎さん。 工場では白い作業服、帽子、マスク、働く広場 2021.6滋賀県大津市の就労継続支援A型事業所「がんばカンパニー」がんばカンパニーでは、安全で良質な素材からクッキーをつくっている24

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