働く広場2021年6月号
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働く広場 2021.6省 庁する障害者が体力がついて長い時間働けるようになった」、約6割が「障害者の表情が明るくなった」(図2)、「感情面で落ち着いてきた」、「意欲が向上した」と回答しています。それ以外にも、「コミュニケーション力が向上した」、「地域住民との交流する機会が増えた」、「自分で判断できるようになった」などの回答もあり、身体・健康面、精神・情緒面での効果以外に、仕事への取組姿勢への効果もあることがうかがえ、就労訓練としての農業も期待されています。このように農福連携は、障害者が農業分野での活躍を通じ、自立や生きがいを持って社会参画していく取組であり、障害者の就労機会の創出となるだけではなく、農業分野の新たな働き手の確保につながる取組であり、これを通じて農業・農村の維持発展につながることが期待されています。そのため、農福連携を強力に推進するため、2019(令和元)年に菅官房長官(当時)を議長とする「農福連携等推進会議」を設置し、今後の推進の方向性を「農福連携等推進ビジョン」として取りまとめました(図3)。農福連携の裾野を広げるためには、現場において①知られていない、②踏み出しにくい、③広がっていかないという課題があると認識しており、このビジョンにおいては、それぞれの課題に対して、3つのアクションを位置付け、①認知度の向上のため、農福連携のメリットの客観的な提示、国民全体に訴えかける戦略的プロモーション、②取組の促進のため、ワンストップで相談できる窓口体制の整備、農福連携を進める専門人材の育成、③取組の拡大のため、各界の関係者が参加するコンソーシアムの設置、ノウフクアワード選定による優良事例の表彰・横展開などに取り組むこととしています。近年、農福連携は、障害者だけではなく、高齢者の支援や生活困窮者の就労訓練など、広がりのある取組となってきています。また、農業の担い手の不足という課題を抱えている農業分野、障害者の働く場が少ないという課題を抱えている福祉分野、それぞれが手を結び合い連携することで、双方の課題を解決できるのではという背景のもと、農福連携の取組が推進されてきており、現在、様々な形で取組が広がってきています。農福連携と聞くと、農業者が障害者を雇用する形、障害者就労施設自体が農業生産や農産加工に取り組む形を、まずはイメージするのではないかと思いますが、それ以外にも、障害者就労施設が農業者の元に出向き、農作業の一部を請け負う事例、特例子会社が農業に参入する、もしくは地域の農作業を請け負う事例、農業者と障害者就労施設のニーズを農協がマッチングする事例、食品関連企業が農業者や障害者就労施設と連携して新たな品目の栽培を手掛ける事例、地域協議会が農福連携の専門人材育成に取り組む事例など、地域の実情や課題に則した様々な農福連携の形が生まれてきています。農福連携の取組が広がってきているのは、農業分野、福祉分野双方の課題解決につながるいわゆるwin・winの関係にあるからといえますが、農福連携に取り組むことによるメリット、効果があることも分かってきています。例えば、雇用などにより障害者を受け入れ農福連携に取り組んでいる農業者のうち約8割は、「障害者を受け入れて貴重な人材となった」、同じく8割は、「年間売上が増加した」と回答しており、実際に農福連携を実践している農業者は、農業経営に及ぼす効果を実感しているといえます(図1)。一方で、農業に取り組む障害者就労施設の約9割は障害者が農業に携わることでプラスの効果があったと回答しており、「施設を利用農福連携の推進について農林水産省 農村振興局 都市農村交流課261 広がりを見せる農福連携3 農福連携推進の方向性2 農福連携のメリット

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