働く広場2021年6月号
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働く広場 2021.6とともに、企業やハローワーク等と連携した就労継続の支援を行う」と記され、さらなる展開がありました。 また、地域包括ケアと地域共生社会を統一して、介護予防と健康増進を図るため、元気な高齢者や障がい者にも「労働を社会参加の一方法」としてすすめる流れが出ています。まさに、就労はいわゆる労働年齢にある人だけでなく、高齢者や障がい者にも社会活動、社会参加の手段になったわけです。 なお、表は、ILO(国際労働機関)とFundación ONCE(スペイン視覚障害者全国組織)の共同刊行物『Making the future of work inclusive of people with disabilities(障害者を包摂した仕事の未来へ)』の概要です。若年認知症が認知症という単なる疾患でなく、障がい者としても位置づけられた結果、PWD(people with disabilities:障がいのある人々)の一員として、これらの項目の達成が今後求められるべきでしょうし、周囲のサポートもぜひ必要だと思います。宮永和夫(みやなが かずお) 1975(昭和50)年、群馬大学医学部卒業。2000(平成12)年、群馬県こころの健康センター所長。2007年、ゆきぐに大和病院院長。2015年、南魚沼市・病院事業管理者を経て、現在に至る。専門は、老年精神医学、若年(性)認知症、高次脳機能障害、大人の発達障害。日本老年精神医学会評議員。特定非営利活動法人若年認知症サポートセンター理事長。 おもな著書に、「若年認知症の臨床」(新興医学出版社、2007年)、「高次脳機能障害のある方と働くための教科書」(日本法令〈共著〉、2020年)などがある。うちに、同じ方向を向いて話したり歩むことが心地よいと思うようになりました。 就労の話もすぐに「飲みニケーション」で話題となりました。仕事を辞めたり、休職中の本人たちが、もう一度仕事に復帰したいといい出したのです。動機はいろいろでした。単に、経済的に苦しいという人もいましたし、まだ働いている同期と一緒に仕事をしたいという人もいました。働かず家にいてもつまらないので、ボランティアをしたいという人もいました。それではということで始めたのが、「ジョイント」という就労型デイケアセンターでした。 「ジョイント」では、ボランティアで公園の掃除を始めただけでなく、本人たちが自分の作品を売って、金銭を得る事業が生まれました。それらを通して、家族会における「患者さん」のイメージとは異なる個々の性格と疾患の特徴を、私たちはより深く認識するようになりました。この時点ではまだ、医療や介護の関係者に「認知症の人と労働」は結びついていませんでした。しかし、2008年に発表された厚生労働省の『「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」〜報告書〜(平成20年7月)』において、若年性認知症対策の項目が設けられました。そして、若年性認知症に関する相談から診断・医療の充実のほか、雇用継続や就労の支援などを行い、一人ひとりに応じた支援体制を構築することが喫緊の課題であると書かれ、認知症の人にも就労支援の内容が入ることになりました。 以後、若年性認知症には就労という言葉がついて回ることになりましたが、認知症施策推進関係閣僚会議による『認知症施策推進大綱(令和元年6月18日)』の「第2 具体的な施策・4認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援」のなかに、「若年性認知症支援コーディネーターの充実等により、若年性認知症の人への支援や相談に的確に応じるようにする若年認知症の人の支援と就労新たな就労形態や雇用関係に障害者包摂の視点を組み込むべきこと表 『障害者を包摂した仕事の未来へ』の概要包摂的な技能開発と生涯学習新たな基盤構造、製品、サービスは、誰でもアクセス・理解・利用が可能なユニバーサル・デザインの原則に従ったものとすべきこと支援技術は入手可能で手頃なものとすべきこと経済の成長分野及び開発分野へ障害者を含むさらなる措置が必要なこと12345★本誌では通常「障害」と表記しますが、宮永和夫さんの希望により「障がい」としています出典:ILO駐日事務所プレスリリース(2019年11月21日)3

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