働く広場2021年6月号
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働く広場 2021.6る管理部のほかに保安本部にも配属できた。「もともと障害者雇用に理解のある社員がいたことでスムーズに進みました」と、山﨑さんは明かす。 受入れが決まった部署では、必ず事前に勉強会を実施している。法定雇用率などの基本的な知識を学んだあとに、配属されるスタッフに必要な配慮を、本人の同意を得たうえで説明する。スタッフの担当業務は封入封かんといった軽作業から始めたが、日によっては行う業務がなく、急きょ別の部署の作業を手伝うこともあった。そこで実績や働きぶりを見てもらって、新しい仕事を担当するようにもなったという。採用活動も進めていき、「採用基準が決まっていなかったので、まずは職歴などを問わずに会ってみることを優先させました」と山﨑さんはいう。面接時には、その場でエントリーシートを記入してもらった後、1時間~1時間半ほどかけて1人ずつ話をじっくり聴く。特に障害については経緯や現状、支援機関などの通所経験や支援状況を重要視した。雇用形態はパートタイム社員だが、昨年初めて契約社員として特別支援学校から1人採用している。スタッフが1人で配属される部署には、業務指示役の社員が1人つき、山﨑さんはフォロー役に回った。日常的に様子を確認できるわけではないため、週1回1時間の面談も行うことにした。「障害者雇用の理解も経験も浅い職場ですから、なにか問題が表面化してから対応するのでは遅すぎます。少しでも早く異変に気づくことはもちろん、定期的にじっくり話を聴くことで、本人が不安や悩みを抱え込まないようにすることが大事だと考えました」複数の部署に点在するスタッフたちは、通勤・勤務時間もバラバラだ。基本的な体調管理は日報で見守ってきたが、スタッフ同士の情報共有やコミュニケーションが十分ではないという心配があった。そこで朝礼の代わりとしてスタッフが集まった「昼礼」を毎日13時から行ってきたそうだ。全員が顔を合わせ、その日の体調や仕事内容などについて伝えあっている。 公認心理師の2人は、定期的に各部署を回ってスタッフの様子を確認しながら声かけもしている。「人によっては声かけを増やしたり、逆に減らしたりといった工夫をしています」と茂田さんはいう。スタッフとの面談も、山﨑さんを加えた3人で交代しながら行っている。気になることがあったときや、対応に困ったときなどは、月に1回受けている「スーパービジョン(※)」の場で助言をもらっているという。そこで、むずかしい課題の解決の手がかりが見つかることも多く、もらったアドバイスに沿って当事者の主治医と連携し、職場での配慮が改善できたケースもあるという。また月1回、スタッフが集まる「情報交換会」では、日ごろ困っていることや、うまくいったこと、失敗したことなどを共有するほか、心理学的なワークショップも行っている。「雑誌などの写真や絵を切り貼りするコラージュ療法で自己理解を深めたり、仕事中の上司に声かけする方法などを学んだりするほか、チームでのペーパータワーづくりやパソコンミニ教室など、個々のスキルアップにつながるような幅広いプログラムを企画しています」と、茂田さんは話す。 次に、東京本社で働くスタッフに話を聞かせてもらった。まずは2020年2月に入社し、技術本部に配属されている中なか村むら純じゅん子こさん。もともとCADオペレーターとして建築図専門職によるサポート脳出血から高次脳機能障害に週1回1時間の面談※ スーパービジョン:カウンセラーや心理療法家が、より知識や技能の熟達した上級者から、事例に関して助言や指導を受けること情報共有のために月1回開催される「情報交換会」(写真提供:日本テクノ株式会社)6

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