ながら就労支援ネットワーク会議の一部分が実現。当事者である須田さんもすでにその主要メンバーの様相を醸かもし出す。 就労支援の「理念」から切り込む。センター業務を受託してまだ半年ではあるが、センター長の佐々木さんは「真心をこめたあきらめない支援で、明るい未来を応援!」とスローガンを力強く返す。2021年4月現在の登録者数は1156人。障害種別では、精神障害542人、知的障害423人、身体障害173人、その他18人。知的障害および発達障害を含む精神障害の割合が大きいのは、県内・全国の傾向とも一致する。登録者のうち就労者数は568人(内訳は、知的障害263人、精神障害220人、身体障害82人、その他3人)。約500人の定着支援を展開する。運営はすべて、常勤職員の4人体制でになう。 「あきらめない支援」について、佐々木さんはさらに「登録者の就労への向き合い方については、ときに本人が定めるハードルが低すぎることもあるし、逆に高すぎることもある」と分析。あきらめない支援を進めるためには、いったん「ハードル」を棚上げして、じっくり相談するというスタンスだ。そしてスローガンは、支援を積み重ねるなかで、バージョンアップしていきたいという。佐々木さんの強い思いが話の端々に滲にじみでる。会福祉法人に就職、障害者就労支援にもたずさわってきたが、体調管理のこともあり退職した。体調が落ち着いた現在は求職中の身でもある。在学中から印象的な彼の笑顔が、今回の取材の緊張感を和らげてくれる。 越谷市障害者就労支援センターは2005年に開設。埼玉県内に41カ所ある市町村障害者就労支援センターの一つ。地域の障害者就労支援の中核的拠点である。国の機関であるハローワーク越谷が設置されるのを機会に、同じ建物のなかに設置することが実現した。東武スカイツリーライン「越谷駅」東口から徒歩で10分程度の好立地。市役所からも5分。開設当初から越谷市は三つの団体に運営を委託してきた。2020(令和2)年10月から受託しているのがウェルビー株式会社。就労移行支援事業等を全国展開する民間企業だ。センター長の佐さ々さ木き裕ひろ美みさん、同社のマネージャー竹たけ内うち恭きょう子こさんが出迎えてくれた。 ハローワーク越谷が入るビルの3階にある同センター前の多目的スペースで、さっそく取組みについてうかがう。ほどなく同センターを所管する越谷市福祉部障害福祉課の斉さい藤とう秀ひで樹きさん、丸まる岡おか龍りゅう介すけさんが合流。さらには、ハローワーク越谷から所長の茂もてぎ木悦えつ子こさん、求人・専門援助部門統括職業指導官の熊くま谷がい真ま貴き子こさん、就労支援コーディネーターの風かざ間ま美み雪ゆきさんが3階へと上がって来てくださり、ディスタンスを取りながらも、さ 今回は、従来の本コーナーとは異なる視点を提供したい。一つは、あえて筆者の勤務先大学の立地自治体を訪ねること。もう一つは「編集委員〝と〞行く」を実現すること。 筆者が勤務する埼玉県立大学の開学は、1999(平成11)年。立地自治体の越谷市については障害者就労支援を含め、「越谷市障がい者計画」の策定などにもかかわらせていただいてきた。しかし、開学から22年の経過のなかで取材先にはなっていなかった。地元すぎるための遠慮もあったが、垣間見てきた同市の障害者就労支援の取組みを全国にも発信したい……、そんな思いに駆られた。後者もかねてからの願い。障害のある当事者とともに現場を訪ねることで、われわれ編集委員とは、また違う切り口を提供してもらえるのではないか。本誌編集委員会での賛同も得て、長年の「夢」が実現することになった。 初夏を思わせる日差しが爽やかな日に、越谷市障害者就労支援センターを訪れた。筆者の「夢」を一緒にかなえてくれるのが須す田だ涼りょう太たさん(25歳)。実は須田さんは、埼玉県立大学社会福祉子ども学科を卒業した社会福祉士だ。車いすを巧みに操作しながら学業に励んでいたころの姿が蘇る。先天性の血友病で身体障害者手帳の交付を受けている。卒業後、社地域障害者就労支援の中核的拠点地域で連携しワンストップの就労支援へ働く広場 2021.7須田涼太さん「編集委員“と”行く」で、新たな視点を切り拓く障害のある人が働くための地域の土壌づくりとネットワーク共生社会を楽しむための職場づくり123POINT21
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