働く広場2021年7月号
24/36

開けますよね」と続けた。 もう一つ、今回の取材で避けて通れないのが、新型コロナウイルス感染症による影響。支援対象者のなかには、自分だけがリモートワークを余儀なくされているのではないかと不安を持つ人もいる。コロナ禍にともなう雇用状況の悪化に対して、どう向き合っていくのか、就労支援センターの支援力がさらに試されていく。 再び佐々木さんへ、就労移行支援事業を展開する法人が、市の就労支援センターを受託することについて、ズバリうかがった。 「たしかに受託法人の性格上、自社の就労移行支援事業に誘導するのではないかと心配する向きもあります。しかしながらセンターの使命は就労支援の核となり、市内の事業所の特徴を活かすこと。ここでは、法人としての定着支援の経験を軸に、公共の就労支援の役割をさらに徹底していきたいです」 その思いを具体化するのが、市内七つの就労移行支援事業所から構成される協議体である「就労支援ネットワーク」。定期的な会合を持ち、まさにそれぞれの特色を提供し合いながら登録者の多様なニーズに向き合っていく仕組みといえる。まずは就労移行支援事業所間のネットワークを固めていくことも特徴の一つなのだろう。 障害者が働くことについて、多様な支 越谷市は人口約34万5千人(2021年2月現在)、埼玉県内で第四位の中核市である。委託元である越谷市福祉部の斉藤さんも、プロポーザル方式(※)で民間事業所が受託した同センターの展開に期待を寄せる。今日の障害者雇用・就労の課題は、労働と福祉のアプローチを地域において、いかに統合できるかである。元来、基礎自治体の庁内には、障害者雇用そのものを直接取り扱う部署はない。ハローワークと就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、それだけでなく、障害福祉サービスを提供するすべての福祉分野をいかに結びつけていくのか。市町村行政の手腕が求められる。 今年度から5カ年で展開する「第5次越谷市障がい者計画」の基本理念は、「障がいのある人もない人も分け隔へだてられることなく、ともに育ち、ともに働き、ともに暮らすことのできる地域社会」。斉藤さんはあらためて「分け隔てられることなくともに働くこと」の意義を強調するが、同市の障害者就労支援の基本コンセプトということであろう。中核市の政策としての重みが基本理念にも響きわたる。 ハローワーク越谷の専門援助部門は、1階にある。就労支援機関とこれだけ近い立地は珍しい。まさに「地の利」を活かしたチーム支援がおのずと形成される環境。「事業所への障害者法定雇用率の達成『指導』は、企業『支援』があってこそ」と統括職業指導官の熊谷さん。流通団地など比較的規模の大きな事業所もある反面、中小企業における雇用率達成への向き合い方が鍵を握る越谷市の障害者雇用促進。事業所と求職者を結びつけるきめ細かな支援が求められる。精神障害と発達障害に焦点化したトータルサポートもまた、効果的な支援手段。就労支援コーディネーターの風間さんは、豊富な支援経験を活かした地域就労支援のまさに調整役をになっている。 「ただちに職業紹介に結びつくのがむずかしい課題をもっている求職者に対しては、窓口での相談に時間がかかるのでは」との問いに、熊谷さんは「ニーズによっては適切に、より適合するサービスにつなげることが大事ですが、まずは本人のニーズと受けられるサービスとの擦すり合わせをするのも窓口として重要です」とキッパリ。ワンストップの窓口としてまずは求職者のニーズを受けとめ適切な紹介を行うこと。1階のハローワークの窓口と3階の障害者就労支援センター、双方のスタッフが階段を行き交い支援内容の相談をすることも少なくない。 熊谷さんのお話をうかがうなかで、須田さんから「実は在学中に、ハローワーク主催の障害学生支援のプログラムに参加したことがあるのです」との発言があった。そして、「学生時代から、将来の進路について相談できる機会があると展望がハローワークとの密接なチームワーク越谷市固有の取組み「地域適応支援事業」働く広場 2021.7越谷市障害者就労支援センター長の佐々木裕美さんハローワーク越谷求人・専門援助部門統括職業指導官の熊谷真貴子さんハローワーク、障害者就労支援センターが入る越谷市産業雇用支援センター越谷市福祉部障害福祉課の斉藤秀樹さん(左)、丸岡龍介さん(右)※ プロポーザル方式:業務の委託先などを選定する際に、複数の者に目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を行った者を選定すること22

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る