働く広場2021年7月号
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確認し、実際の企業の取組みを訪ねたい……そんな思いで「世一緒」を後にして向かったのが、株式会社クリタエイムデリカの特例子会社「株式会社スマートFun」。 搬送用のトラックが出入りする工場の脇を通り、クリタエイムデリカの本社事務所へ。車いす利用の須田さんの姿を見るやいなや手際よく社員のみなさんがサポートに動く。 1948(昭和23)年に越谷市の隣、草加市で製麺業として創業した同社は、1963年に現在の越谷の地に移転。2018年に70周年を迎えたばかりだ。コンビニエンスストアの店舗拡大とともに製麺から調理麺業へと発展。一日約10万食の製造も可能な食品メーカーである。ざる蕎麦、かき揚うどん、冷やし中華、クリームパスタなどなど、お馴染みの麺製品が並ぶ。経営理念は「誇りの持てる会社づくり」。この歴史と理念が障害者雇用の基盤のようだ。環境保全にも注力し、消費期限の延長によるフードロス削減などの商品開発の工夫などの取組みが、「令和2年度彩の国埼玉環境大賞奨励賞」を受賞するなど社会への視野が広い企業である。従来から障害者雇用にも積極的に取り組んできたが、2018年5月に設立したスマートFunは、障害者雇用に特化して翌年には特例子会社としての認定を受けた。 株式会社クリタエイムデリカ代表取締役社長で、株式会社スマートFun代表 ピアサポートのほかに「世一緒」をベースとして独自の活動も展開してきた。その一つ「仕事発見ミッション」は、障害当事者だけで市内の職場を訪問、実習や見学などを依頼する活動。事業所の理解を得るまでは軋あつ轢れきもあるが、それを乗り越えてかかわり合いを築くという「職場参加」の理念を具現化するプログラムである。水曜日にあたる取材日、同所で開催された「すいごごカフェ」のプログラムに遭遇することができた。この日は、障害者生活支援センターの本ほん田だ勲いさおさんからお話があった。かかわり合いを持って暮らしていくなかで、働くことの意義を実感する。適切な支援によるマッチングも重要であるが、それ以上に「関心を寄せ合うこと」、ときに主張の違いから「ぶつかり合うこと」、それでも同じ地域という土俵で経験を「分け合うこと」。「世一緒」の活動には、漠然としてはいるが深しん淵えんな問いかけがあるように感じられた。同法人は、障害者就労支援センターが開設される以前から地域適応支援事業の立ち上げや実践にかかわってきた。障害のある人を、まずは職場にいるべき存在として位置づける。もちろん本人の希望もあるし、職場側の条件もある。それらをひっくるめてかかわり合う。ここもまた地域の耕し場だ。 越谷市の障害者就労支援の仕組みを関係機関、それに企業や障害当事者も含めたネットワーク会議の設定が望まれるところである。伴走者は、必ずしも障害者が利用する機関や事業所の職員でなくてもよい。場合によっては、福祉事業所の職員が企業で働く障害者の伴走者になる。逆に企業の社員がアフター5に、福祉サービス利用者とも交流する。それが地域全体で支える就労支援でありともに働く街をつくる原動力になるのではないか。 昼食を挟んで障害者就労支援センター近くの「職場参加ビューロー・世よいしょ一緒」を訪ねる。「特定非営利活動法人障害者の職場参加をすすめる会」の本部が設置・運営するフリースペースだ。 同法人は、前述の越谷市「障害者地域適応支援事業」に積極的に協力しており、また、越谷市障害者就労支援センターの開設時から約10年間、市から運営を受託した経緯がある。就労支援センターの利用者に対する「ピアサポート(障害当事者同士の支援)による就労支援」を充実させたいと、仕事帰りや仕事のない日に立ち寄れる場として支援センター外に、同法人が独自に負担して開設した。「当番」をになう障害者のほとんどは、離職中か未就労の就労支援センター登録者で、さまざまなかかわり合いのなかで、働くことの基盤をつくり上げていく活動だ。「職場参加」で「働く」を広げる地域ネットワークの実践例を訪ねて働く広場 2021.7地域適応支援事業所での様子(写真提供:特定非営利活動法人職場参加をすすめる会)職場参加ビューロー・世一緒株式会社スマートFunが入る株式会社クリタエイムデリカ本社工場24

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