働く広場2021年7月号
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働く広場 2021.7に影響を与える睡眠や食事、運動といった生活習慣に関する工夫を学びます。さらに、各セッションには、学んだ知識や補完手段を実際の行動に反映させるための「練習」や訓練場面外で行う「宿題」が含まれます。また、受講者同士の「意見交換」や、具体的な場面での対処方法を検討する「今後の対策」というコーナーもあります。これらの要素がセッションの各回に混在する包括的な構成がこのカリキュラムの特長です(図1)。カリキュラムでは、さまざまな知識を学び、セッションのなかで練習を行い、自分の生活に関連した行動に反映させることを目ざしており、この包括的なアプローチが、個人の特性や生活環境によって異なる記憶障害に対するリハビリテーションとして有効であるとされます。①受講者・グループ規模 職業センターでは、記憶障害の診断の有無にかかわらず学習カリキュラムへの参加を希望した受講者を対象に、1グループ最大5人 障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラムと、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムの実施を通じ、障害特性や事業主ニーズに対応した先駆的な職業リハビリテーション技法の開発に取り組んでいます。 高次脳機能障害者の就労支援において、記憶障害にかかわる問題は取り組む必要性が高いといえます。職業センターでは、このたび、記憶のメカニズムや内的・外的な補完手段の学習を含む包括的な構成が特長の「記憶障害に対する学習カリキュラム」の開発を行いました。この学習カリキュラムは、オーストラリアで開発された記憶障害に対する学習カリキュラム「Making the Most of Your Memory」と、これに基づく医療機関Epworth Health Careにおける実践をもとに、職業センターがこれまでに開発した教材も活用して国内向けに作成したものです。学習カリキュラムの内容や試行実施の状況は、2020(令和2)年度末に、実践報告書№38「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介」に取りまとめました。以下にその概要を紹介します。 このカリキュラムは、1回120分、全6回のセッションで構成されます。全6回のうち、第1回〜第5回の各セッションは、「講義」、「記憶の補完手段」、「記憶に良い生活習慣」の三つのテーマで構成されます。第6回は第1回〜第5回の復習です。 「講義」は、記憶のメカニズムや脳の構造、ストレスが記憶に与える影響など記憶にかかわる知識を付与する心理教育的な内容です。「記憶の補完手段」では、記憶機能を補うための内的ストラテジー(※1)および外的補助具(※2)の紹介を行います。カリキュラムを通じて7種の内的ストラテジーと16種の外的補助具を扱います。「記憶に良い生活習慣」では、記憶機能障害者職業総合センター職業センター記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介●学習カリキュラムの構成●実施方法※1 内的ストラテジー:言語的関連づけや視覚イメージの活用など、情報を覚えやすく、思い出しやすくするためのいわゆる記憶術といったもので、           「内的戦略」、「内的対処手段」などと同義※2 外的補助具:メモリーノートやスマートフォンなどの道具を用いて記憶を補う方法で、「外的補助手段」、「外的記憶装置」などと同義図1 学習カリキュラムの構成28

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