働く広場2021年7月号
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編集委員のひとことミニコラム第3回ともに働き合うことの実感を埼玉県立大学教授朝日雅也※今号の「編集委員と行く」(20〜25ページ)も朝日委員が執筆しています。 ご一読ください。働く広場 2021.7 障害者による接客を目ざすカフェ「フォーライフカフェ」が、宇治市植物公園内にオープンした。運営する「NPO法人京都フォーライフ」(久世郡久御山町)ではこれまで、「葉山コーヒー株式会社」(神奈川県)から仕入れた豆を障害のある従業員が選別し、通信販売などで販売してきた。 カフェの店内は22席、自家焙煎の豆を使う「フォーライフコーヒー」は380円(税込)から。ケーキセットや豆も販売する。徐々に障害のあるスタッフを増やし4〜5人が働く予定。地元の福祉施設・授産施設で障害者がつくる菓子などの販売も考えている。 営業時間は10時〜16時。公園と同じ月曜日が休み。問合せは、京都フォーライフへ。 電話:0774ー66ー3301 障害者のアート作品を発表できる場として、伊予郡松ま前さき町ちょうで障害者就労支援事業所を運営する「NPO法人インクルーシヴ・ジャパン」と「凸版印刷株式会社」(東京都)が、松山市内にカフェ「ARTCAFÉInclusivesupported by NESCAFÉ」をオープンした。広さ約80㎡で、内装のデザインや施工は凸版印刷が手がけた。コーヒーマシンやコーヒーは「ネスレ日本株式会社」(兵庫県)が提供する。 インクルーシヴ・ジャパンが運営する就労支援事業所には、身体や知的、精神などさまざまな障害のある約60人が通所。絵画やししゅう、アクセサリーなどの作品をつくっている。カフェは現在、利用者を通所者や家族らに限定しているが、今後は一般開放して展覧会やワークショップを企画し、障害者アートに親しめる場を目ざす。インクルーシヴ・ジャパンと凸版印刷は今後、障害者アートをデジタルアーカイブ化し、企業にアート作品を活用してもらえるよう取り組んでいく。カフェに障害者アート愛媛障害者が選別した厳選豆を使うカフェがオープン京都働く 「当社では障害のある方に一生懸命働いていただいています」……事業所訪問や記事のなかでよくうかがうコメントです。内容自体は有難いことですが、気になるのが「いただいています」。取材者側が障害者雇用を推進する立場であると、ついそのような表現になる背景も推察されます。 しかしながら、当該の障害のある人は「雇用」されている従業員であり、雇用契約に基づいて労働を提供している存在です。もちろん、そのような趣旨ではないと思いますが、社会の側がお願いして働かせていただいているわけではないことは、いうまでもありません。 障害者雇用率が連続して上昇する一方で、量的な側面のみならず、その質の確保・向上が一層問われています。その際の鍵は「ともに働き合う職場」の実現です。 障害についての「配慮」からていねいな表現になりがちのところもあるかと思いますが、それは取材時における顔写真の掲載などを含む個人情報の提供などの取扱いにもかかわってきます。これらについて、障害を理由として特別に「配慮」すること自体、ともに働き合う社会から障害のある人を遠ざけてしまうことになってしまうからです。 重要なのは、障害の有無にかかわらず当たり前に一緒に働き、そこでは障害の有無についてあらためて意識する必要のない職業世界を実現することです。当誌の趣旨に照らせば、もちろん「障害」に焦点を当てることは当然の使命ですが、この考え方に変わりはないはずです。 「当社では障害のある従業員が適切に持ちうる力を発揮しています」……当たり前の表現が通用する成熟した社会を目ざしたいものです。31

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