働く広場2021年7月号
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働く広場 2021.7とを心がけています」と、話してくれた。リクルートオフィスサポートの大きな特徴は、5年前からテレワークによる「在宅勤務制度」を本格的に導入し、地方在住の障がいのある人の雇用を進めてきたことだ。その数は約90人に増え、いずれも北海道や沖縄県などを中心とした地方在住者だという。導入の経緯について榎本さんは、「首都圏だけではなかなか雇用が進まない状況だったため、2014年ごろからIT業界の先例を参考に検討しました。ただ当初は、テレワーク向けの社会的インフラが不十分だったり、希望の人材も見つからなかったりして、いったん断念しました」とふり返る。その後、北海道旭川市が実施した「UIJターン促進テレワーク調査・実証事業」に参加し、2016年にはトライアル雇用を経て4人を採用した。「完全な在宅勤務で、予想以上の業務能力を発揮してくれました。地方には、力を十分に発揮できていない人が一定数いることもわかり、地方での採用を進めることになりました」と榎本さんは話してくれた。採用については、まず面接とパソコンスキルの実技試験を行い、通過した場合は自宅を訪問して、仕事環境と、家族や支援機関など緊急連絡先の確認をする。採用基準について榎本さんは「自分の意思や体調などを隠さずきちんと発信できる、基本的なコミュニケーションがとれる人を重視します」と説明する。待遇は、1日6時間勤務の契約社員として、東京都の賃金水準を参考にした時給制で、賞与もある。定期通院制度などを含め、福利厚生は正社員とほぼ同じだ。またテレワークに必須のセキュリティ対策については、各自のパソコンでデータを保管することのないVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ)という仕組みで対応。さらに24時間のログ管理によって、時間外労働や不正を防止している。リクルートオフィスサポートでは当初、在宅勤務者には総務や経理の業務を担当してもらう予定だったが、個人情報の取扱いや業務の多さから、継続的な遂行がむずかしいことがわかった。そこで新たに探したのが、リクルートの不動産情報サイトの内容のチェック業務だ。リクルートからの評価も高かったことから、さらにほかのサイトをチェックする業務も請け負うことになった。「審査系の業務は各自のペースで進められるため、在宅ワークに合う、しかも障がい種別にもそれほど左右されない業務として、新たな職域となりました」と、榎本さん。審査系の業務を前提にした採用では、簡単な文章問題や計算問題など自社独自のテストも行っている。在宅勤務は9時半~16時半、休憩1時間を除き、1日計6時間労働だ。出退勤は、チャット(Microsoft Teams)への書き込みで確認する。9時半からの朝会は約10人ずつのチーム別にWEB会議で行い、それぞれの体調や当日業務などの情報交換をする。リクルートオフィスサポートは、在宅勤務者専用のポータルサイト「nなまらamara」も立ち上げた。ちなみに「なまら」とは北海道の方言で「すごい」などの意味で、立ち上げにかかわったメンバーからの公募で決めたそうだ。メンバーは毎朝このサイトを開き、自分の体調を5段階で表示する。業務中に体調が悪くなったときはチャットで発信し、WEB会議で面談をしたうえで早退や業務調整を決める。榎本さんはいう。テレワークで在宅勤務在宅勤務に合った職域専用サイトで労務管理在宅勤務者専用のポータルサイト「namara」自分の体調を5段階で表示できる。業務中に体調が悪くなったときなどはチャットで発信もできる7

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