働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8出で水みず大だい介すけさん。山田さんとは会社説明会で出会って以来、同じ職場だという。文章の理解が苦手そうだということは、出水さんもすぐに気づき、説明の仕方を変えるなど工夫を重ねてきた。一方で山田さんも、新しい業務を頼まれたときは、猶予期間をもらい、自発的に就労移行支援事業所に行ってスキルを習得してきたそうだ。出水さんが話す。「いまは『こういう特性のある社員』といった感じで職場に溶けこんでいます。しかも山田さんは、チェック業務について周囲からの信頼が厚いですね。コミュニケーションが苦手といっていましたが、最近は、自分から同僚に『なにかできることはないか』と声がけし、実際に業務依頼も増えています」 障害者雇用が進む拠点の一つ、小牧営業所(愛知県丹羽郡大口町)も取材させてもらった。検査室では、いすに座って拡大鏡をのぞきながら小さな金属部品を検査する社員たちの姿があった。そのなかの一人、伊い藤とう奈な緒おさんは、疾病による左下肢機能全廃の障害がある。2017年にグリーンテックに転職する前も、同様の職種で働いていたが「立ち作業が多いうえに、建物が古くてトイレのバリアフリー化もされず、苦労しました。ここは手すりつきの洋式トイレもあると聞き安心しました」と話す。とはいえ入社後に、ハード面での困りごとが見つかり、改修してもらった。例えば従業員用の入口にある階段の手すり設置。対応した村井さんによると、「もともとここは別会社の建物を改装したのですが、階段に手すりがないのは、私たちにとっても危険だと気づきました」という。伊藤さんも「手すりを使ったほうが力をかけやすく、安心して昇降できます」と喜ぶ。あらためて点検すると、ほかにも建物内の階段や手洗いコーナー、下駄箱などに手すりの設置や固定強化が必要な場所が見つかったという。「伊藤さんだけでなく、ほかの社員や来客のためにも、改修すべきことはまだまだあります」と村井さんはいう。伊藤さんのサポート役を務めるリーダー職の佐さ々さ木き優ゆうさんは、「伊藤さんは入社後も、自分の障害について隠すことなく、いろいろなことを話してくれたので、私たちもサポートしやすかったですね。周りへの声かけもスムーズにいきました」と話す。「人よりも歩く速さなどが何倍も遅いので、なるべく迷惑をかけないようにがんばりたいです」と話す伊藤さんは、先日、初めて顧客先に派遣されて仕事を任されたという。佐々木さんは「彼女は手作業が速いだけでなく、なにごとにも意欲的に取り組んでくれます。今後も、チャレンジ精神を活かしてあげたいですね」と話す。現場の声で階段を改修階段に設置された手すり金属部品を検査する伊藤奈緒さん(左)伊藤さんをサポートする、リーダー職の佐々木優さん8

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