働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8 もう1カ所、障害者雇用が進む豊橋営業所とテレビ会議システムでつなぎ、3人の方に話を聞かせてもらった。2013年入社の鈴すず木き貫とおるさん(31歳)は、脳性麻痺による歩行困難と上肢機能に軽度の障害がある。「もともと大学で法律を学んでいましたが、親の病気を機に2年次で中退し、ハローワークの紹介で就職しました」と明かしてくれた。両手の握力が弱いため、職場では重い物などを運べないことを理解してもらっている。コンデンサーなど基盤部品の検査を担当しているが、顧客先に派遣されることもあるそうだ。「職場では、周囲から、よい意味で特別扱いされないのが心地いいですね。障害があることをいい訳にせず、いろいろな仕事をしていきたいです」と話す鈴木さんは、体力づくりをかねて毎日40分の自転車通勤を続けている。2020年に入社した小お野の田だ龍りゅう也やさん(19歳)は、特別支援学校時代の実習を経て入社した。「自分はプラモデルづくりが好きで、細かい作業も得意なので、合っているなと思いました」とふり返る。自動車の小さな端子部品の検査を担当し、8000個入りの箱を一日3箱ほどこなす。光のあて具合で傷などを見つけるが、先輩社員から「リズム感をもって、テンポよくやると不具合を見つけやすいよ」と教わったそうだ。「みなさん、わかりやすく作業を教えてくれます。最近は逆に、作業が速すぎると注意されるので気をつけています。この先は、もっと顧客先の現場に行けるようにがんばりたいです」と意気込みを語る。そんな小野田さんは、入社2年目にして現場デビューを果たした。所長の中なか村むら勉つとむさんは、「1年間ほぼ休まず真面目に取り組んだ働きぶりと本人の意欲をみて、4人チームの1人として半月間、派遣しました。それにより、自信がついたと思います」と話す。豊橋営業所は全社員108人のうち、障害のある社員は11人いる。「いまでは障害の有無を意識しないほど溶け込んでいるので、分け隔てなく指導しています」という中村さんは、「現場としては、利益追求とともに一人ひとりのスキルアップや、やりがいの両方に目を向けつつ、仕事とのマッチングを重視しながら障害者雇用を進めていきたいと考えています」と抱負を語る。 あらためて社長の中島康雄さんに、現在の課題と今後について話してもらった。「社内における障害者雇用への理解は、正直、まだまだ不十分かもしれません。その一方で、障害のある社員の価値観もそれぞれ違っていて、『みんなと同じように扱ってほしい』という人もいれば、『ハンデをしっかり認めてほしい』という人もいることがわかってきました。一般社員も含め、相互理解を深めながら『いかに社員全員が働きやすい職場にしていくか』が大きなテーマになっています」働く向上心の高い社員も少なくないことから、「本人の意欲を、きちんと活かせる職場にしたいというのが本心です」と康雄さんは力を込める。「『障害があるからこの作業はできないだろう』というのは、やはり偏見ですよね。世の中を見渡せば、いろいろなチャレンジをしている障害のある方たちがいます。社内でも、同じように夢や目標を持っている人たちのサポートをしたい。私はいま、その入口を少しつくっただけですが、今後も社員みんなとともに、どんどん広げていけたらと思っています」特別扱いされない障害者雇用への理解豊橋営業所で働く鈴木貫さん※入社2年目の小野田龍也さん※豊橋営業所長の中村勉さん※(※写真提供:株式会社グリーンテック)9

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