働く広場2021年8月号
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 そもそも、キヤノン株式会社(以下、「キヤノン」)の創業者である故・御みたらい手洗毅たけし氏が大分県の出身であることから、大分県内には何カ所ものキヤノンの工場がある。また、大分県は「日本の障害者雇用の発祥の地」ともいわれる。そこにキヤノンの特例子会社がある。何か因縁めいたものを感じるのは私だけだろうか。 キヤノンウィンドの歴史は、2007(平成19)年に地元の「社会福祉法人暁ぎょう雲うん福祉会」(以下、「暁雲福祉会」)が就労移行支援事業として、実習生を大分キヤノンの工場で実習させたことから始まる。 暁雲福祉会の常務理事であり、キヤノンウィンドの取締役も兼務する丹に羽わ和かず美みさんは、当時をふり返り、「実習当初から、当法人と大分キヤノンは実務レベルで常に話し合いの機会を持ってきました。『企業と福祉』というフィールドの違いは大きく、ときに日に数回、数時間も知的障害のある方の雇用のむずかしさについて率直に議論を重ねました。そのようななかで、互いの強みを活かし、弱みを補うフルサポート体制が生まれ、企業と社会福祉法人それぞれが得意分野での役割を果たし、企業として継続を図ることで一致しました。私自身にも『知的障害会福祉法人の就労移行支援事業先として大分キヤノン内で企業実習を行っていたことから、このような形を取っている。 国内で、新型コロナウイルスの感染が確認されてから約1年半が過ぎたが、収まるどころか次々と変異株が現れ、世界中を席捲している。切り札といわれる「ワクチン接種」も、日本は世界から大きく後おくれを取り、やっと高齢者への接種が本格化してきた段階である。取材時の5月は、東京をはじめとする9都道府県に緊急事態宣言が出されており、県外への移動自粛が求められていることから、以前から訪問したいと思っていた、地元大分のキヤノンウィンドを取材することとした次第である。 キヤノンウィンドは冒頭で紹介した通り、大分キヤノンの特例子会社である。大分市内にある大分キヤノン大分事業所へは、今回の取材のアテンドをしていただいた当機構大分職業能力開発促進センターの高柳順一さんにも同行をお願いし、カメラマンの官野さんと3人で訪れた。 キヤノンウィンドは、大分キヤノン大分事業所の敷地内に同居している。いまはコロナ禍ということもあり、たいへん厳しい感染症対策が取られていた。 最近はスマートフォンが一般的となったが、道行く人に「デジタルカメラ」と聞けば出てくるメーカーは「キヤノン」であろう。放送用の4Kや8Kといった最先端のデジタル放送機器、プロのカメラマンが使用する一眼レフカメラ、さらには一般の家庭でも普及しているインクジェットプリンターなど、だれもがその便利さを体感していて、人が暮らしていくうえで欠かせないものを世界に供給し、世界中に工場がある日本のグローバル企業の一つである。 今回は、私の地元でもあり、大分県にあるキヤノンの工場の一つ、大分キヤノン株式会社(以下、「大分キヤノン」)と、その特例子会社である「キヤノンウィンド株式会社」(以下、「キヤノンウィンド」)を取り上げることとした。 キヤノンウィンドの特出するものとして、「地元の社会福祉法人との合弁会社」であるという点があげられる。一般的な特例子会社は、企業が独自でつくる場合が多いのだが、キヤノンウィンドは元々、社新型コロナウイルス感染拡大第4波設立の経緯働く広場 2021.8社会福祉法人暁雲福祉会常務理事、キヤノンウィンド株式会社取締役の丹羽和美さん企業と社会福祉法人がそれぞれの得意分野を活かし設立障害者雇用が親会社に与えるプラスの影響「人」と「場所」が整った、特例子会社のあるべき姿123POINT21

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