働く広場2021年8月号
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継続的な作業創出を行いキヤノンウィンドが企業として成り立つことが、大分キヤノンに対する貢献ではないでしょうか」と想いを語ってくれた。 また、キヤノンウィンドでは、大分キヤノンの生産技術陣と協同しながら「できそう」を「できる」へ転換するさまざまな「治工具」(※)をつくり出し、職域拡大を進めている。そのすべてが「からくり」によるもので、安全性・品質を重視したわかりやすい、飽きさせないコンセプトでつくられている。 ネーミングも面白い。「ホットサンド」、「ホッチキチ」、「ミッションインプッシュプル」など、改良された治工具が並ぶ。ここで開発した治工具は、ほかの工場でも活用されている。個々の障害の特性に合わせ開発されたものが、ほかの工場でも広く水平展開されていることは「ユニバーサルデザイン」の模範とするところである。改良された治工具はその成果が明確に出る。作業者にとってもわかりやすいことが一番である。 カメラの「取扱説明書」の梱包作業を見ると、前方に世界地図が貼ってあり、当日の生産数が出荷国ごとに表示されている。そこへの出荷が終わると、貼ってある「カメラの絵」を剥がして作業終了となる。現場では、随所にこのような工夫がなされている。のある方々の一般就労を叶えたい』という強い願いもありました」と語る。 また、大分キヤノン代表取締役社長であり、キヤノンウィンドの代表取締役社長を兼務する増まし子こ律りつ夫おさんは「キヤノンとしては法定雇用率達成が目的、暁雲福祉会は一般就労が狙い、その二つが合致したのも事実です」と言葉を加えた。 翌年には、実習生のなかから5人を採用し「キヤノンウィンド株式会社」を設立した。2009年に特例子会社の認定を受け、今日に至っている。現在では障害のある従業員24人のうち、知的障害のある人は22人(うち、重度14人)、精神障害のある人は2人である。大分キヤノンからは業務サポート、生産管理スタッフが、暁雲福祉会からは業務および会社生活全般を支援する福祉職が出向している。 大分キヤノンの業務は、カメラなどの生産から、あらゆる映像関連の総合事業、さらには最先端技術の加工・自動技術までと、管理業務全般で成り立つ。キヤノンウィンドは、そのカメラ生産の前工程を中心として、大分キヤノンのメインラインに送り出す役割を持っている。 当初の業務は3種類だったが、現在では50種類以上へ増え、さらに職域拡大を図っている。業務内容ボードで紹介をしていただいたが、①詰替え作業、②組付け作業、③計数作業、④貼付け作業の、おもに四つの作業を行っている。それぞれ個々に工程マスターのマトリックス表をつくり、達成度・習熟度が一目でわかるように掲示し、作業を数値化・見える化している。採用に当たっては採用前の企業内実習を重視し、企業および社会への適応を判断している。 職場長の渕ふち上かみ恵え美み子こさんは大分キヤノンからの出向である。2011年からキヤノンウィンドを担当してきた。 「当初は障害特性の理解ができず、作業性の見極めが特にむずかしかったです。いまでは全員の作業性が理解できて、仕事を導入しやすくなりました。月1回の大分キヤノン生産会議において、キヤノンウィンドの仕事量を確保する仕組みになっています。大分キヤノンの生産管理部門がキヤノンウィンドの窓口となっており、生産計画が立てやすいです。現場で働く広場 2021.8パッケージへのホチキス止めをサポートする「ホッチキチ」を試用する樋口委員大分キヤノン株式会社代表取締役社長、キヤノンウィンド株式会社代表取締役社長の増子律夫さん職場長の渕上恵美子さんシールの貼り付け作業を補助する「ホットサンド」。作業完了を示すイラストが見える※ 治工具:「治じ具ぐ」と「工具」を合わせた名称。加工・組立の手助けや、作業の効率化・省力化などに用いられる器具22

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