働く広場2021年8月号
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が、どのケースも□です。〇にすることで生じる不具合がたくさんあります。一見ムダと思える□の角の部分が重要なのです」 大分キヤノンの従業員数は、約3200人である。キヤノンウィンドはそのなかにあり、食堂や休憩室なども共用している。キヤノンウィンドがあることで、大分キヤノンの社員に与える影響も大きい。 大分キヤノンの人事部長であり、キヤノンウィンドの取締役を兼務する小こ林ばやし浩ひろしさんは「プラスの影響が大きいです」と話す。 「キヤノンウィンドが大分キヤノンに必要なトリガーになっていて、覚醒効果を持っています。彼らがものづくりに必要だという認識が浸透し、社員への意識覚醒効果がたいへん大きい。これは、障害者雇用が親会社に与える大きな要素の一つであり、ユニバーサル社会を形成するうえでの重要なポイントです」 これは、昨今よくいわれているSDGs(持続可能な開発目標)の観点から見ても、社会経済活動のなかで欠かせないものであろう。送り出す方の暁雲福祉会の基本姿勢も重要になってくる。つです」と増子さん。 仕事量確保のために、それまで大分キヤノンが外部発注していたものを取り込んだり、大分キヤノンで行っていたものを棚卸したりすることで、キヤノンウィンドの仕事を担保してきた。IN/OUTを考えると、大分キヤノンのメンバーでやるよりも効率がよい。キヤノンウィンドが大分キヤノンの仕事を請け負うことで、大分キヤノンは、さらに質の高い仕事ができるようになる。 仕事には、当然のことながらQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が必要である。キヤノンウィンド発の製品に不具合があってはならない。キヤノンウィンドの製品が直接エンドユーザ―に行くことはないが、次工程がエンドユーザ―であるという考えを持ち、不具合を止める仕組みをつくるのは、企業としては当たり前のことである。 「今後の雇用は多様性が重要視されます。企業のなかには付加価値的には低いが、ないと困る仕事が残ります。一見するとムダと思えても必要な仕事です。いい方を変えれば『必要な仕事ばかり』です。その『必要な所』に必要な人を組み込む。それが障害者雇用の形態であると思います」と増子さんは続けた。 「例えば、CDのケースなどは、材料などの効率を考えると〇の形になりますさん(25歳)だ。工藤さんはグループホームで暮らしている。「家族も入社を喜んでくれました。仕事は少しずつ覚えていますが楽しいです」という。 廣戸さんは、臼うす杵き市の実家から電車で通勤している。「実習生時代から仕事をやってきたので、いまは慣れてきました」と話してくれた。 キヤノンウィンドの社員は朝、全員が指定場所に集まり、体調確認を行った後、会社の通勤バスで出勤する。勤務場所は、食堂、トイレ、更衣室などの設備と近く、可能なかぎり社員の負担を軽減できるよう配慮されている。職場環境面からも、会社の合理的配慮が至るところに見られる。 増子さんの考えのなかには、「経済活動のなかで維持継続できる会社であり続ける」ということがある。元々は法定雇用率の達成が目的でスタートしたが、ものづくりのなかの一機能として維持することができて、初めて障害者雇用が成り立つ。そのためには、条件を整えることが重要である。 「キヤノンの理念でもある『共生』のもと、さまざまな取組みを行ってきましたが、キヤノンウィンドもそのなかの一経営的観点から見えるもの障害者雇用が親会社に与える影響と送り出しサイド働く広場 2021.8大分キヤノン株式会社人事部長、キヤノンウィンド株式会社取締役の小林浩さん24

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