働く広場2021年8月号
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の点をどうやって乗り切るかがその人にかかってくる。たいへんな重責である。 また、過去に障害者雇用にかかわった人なら、障害の特性や作業性を理解できるが、まったくの「素人」ではすべてを一から始めなければならない。 今回のキヤノンウィンドは、すべての条件が整っている、正に「特例子会社のあるべき姿」を具現化したものである。 私が特例子会社を取材するのは今回が最後となるだろう。その取材先として、読者のみなさんに自信を持って紹介できる企業を訪問できたことは、たいへんうれしい次第である。 「キヤノンのような大企業だからできる」と思う人もいるかも知れないが、重要なのは「考え方」である。 企業規模の大小にかかわりなく、企業は人で運営され、最後は人が決定する。AIや科学がいかに進化しても、最終判断を下すのは人であることに変わりはないはず。人に期待し、ともに進んでいきたいと思う企業が、真の企業である。 今後は、特例子会社についてさらに深堀りを進め、特例子会社の設立を考えている方に、一つの指針を示せるような提案をしたいと考えている。 特に、特例子会社ではその「人」が重要である。また、それに関連して「場所」である。また、その特例子会社が「どこにあるか」も、大きく左右する。 特例子会社のトップは多くは親会社からの出向派遣が多い。派遣された「人」がどう運営するかによって特例子会社は大きく変わる。親会社の社長や役員が特例子会社の社長を兼務すれば、全体のなかでどうやって運営するか、どういうふうに組み込むかを判断しやすいし、全体のなかに取り込んで経営できる。 場所も親会社のなかにあれば、物流費や資材供給、社員の支援も容易だ。社員同士の交わりも自然と生じ、親会社の社員の意識も変わる。 反対に、親会社の課長や部長といった、一管理職が社長として派遣されれば、その「人」の考え方にもよるが苦労するケースも出てくる。加えて場所的にも親会社から離れた場所に特例子会社があれば、その苦労は倍増するケースが多くなるのが通常である。 人的には、親会社への報告、承認をどうするか、派遣された自分の立場もある。仕事も親会社、または関連する企業との商談・駆け引きが必要になる。 ものづくり会社においては「品質」は当たり前で、それ以外に求められるのが「コスト」になってくる。派遣された社長がそ 冒頭で述べていただいた丹羽さんは 「暁雲福祉会としては、『働き続けること』を支えていきたい。『就職』がゴールではなく、『職場定着』がゴールだと思っています。彼らに挑戦する機会を提供し続け、将来想定される障害の重度化や、家庭環境の変化、親なきあとの課題などについても、ともに考えていきたい」と語ってくれた。 私はこれまでに全国、さらには海外も含め多くの特例子会社を見てきた。素晴らしいと感じた会社、「これは?」と疑問を感じた会社などさまざまではあるが、共通する一つの意見を持っている。 どの特例子会社も「これで完成」ということはない。設立よりも「それを維持継続する」ことがむずかしい。 特に、今回のように世界的なコロナ禍など、予期せぬ事態が起こったときや、地震や大規模災害など数十年、数百年に一度といわれるような災害時など、事業形態を大きく変えるような状況に陥ったときなどに、明暗が大きく分かれる。では、そのとき「どうするか?」の判断基準の一つが、親会社の「人」である。一般企業でも同じだが、企業はそれを操作する「人」で成り立つ。筆者が考える特例子会社最後に働く広場 2021.825

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