働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8果、休職制度等がある457社のうち、何らかの事業場外資源を利用したことがある企業は33・9%(155社)、利用したことがない企業は56・9%(260社)、「わからない」「無回答」が合わせて9・2%(42社)でした。事業場外資源の機関別利用状況を複数回答でたずねたところ、最も多かったのが地域センターのリワーク支援を利用したことがある企業で90社、次いで医療機関の復職支援プログラムが89社、コンサルタント会社等の従業員支援プログラム(EAP)が35社となっていました。 事業場外資源が行っている職場復帰支援については各機関それぞれ特色がありますが、本研究ではその中でも特に医療機関に対してアンケート調査(回答数:52機関)を行い、復職支援プログラムの実施体制や実施内容についてたずねました。 復職支援プログラムにおいて主に行われているプログラムの内容は図1の通りです。最も多く実施されている「心理教育」とは、疾病理解、症状の自己理解、セルフコントロールの習得などを主な目的としたものです。「グループワーク」は特定のテーマについて参加者が意見や感想を話し合うものや、集団で何らかの共同作業を行うもので、さまざまなテーマが設定されていました。共通するねらいとしては、休職中の者同士の交流によって自分とは異なる見方や考え方への気づき、グループの中での適切な行動の仕方、他者への働きかけ方についての学び等があると考えられます。 わが国における、メンタルヘルス不調により休職した労働者に対する職場復帰支援を見ると、医療機関においては1997(平成9)年以降、当機構においては2002年以降取り組まれてきました。この間、職場復帰支援を実施する機関の増加、メンタルヘルス不調による休職者の増加や多様化、企業におけるメンタルヘルス対策の推進やニーズの変化等、職場復帰支援を取り巻く環境は大きく変化しています。 このような状況をふまえ、職場復帰支援の現在の実態について多角的な見地から把握し、職場復帰支援の有効性の向上等についての検討を行うため、研究部門では2018年度から2020(令和2)年度にかけて「職場復帰支援の実態等に関する調査研究」を実施しました。 本研究では、企業、医療機関、地域障害者職業センター(以下、「地域センター」)、職場復帰支援を利用し復職した方(以下、「復職者」)に対する、各種調査を行いました。本稿ではそれらの結果の一部についてご報告します。 本研究では国内すべての上場企業3、740社(2019年当時)を対象としたアンケート調査(回収率:12・4%)を行い、社内のメンタルヘルス対策、休職・復職の実態、事業場外資源(※1)の利用状況等についてたずねました。回答企業の98・3%(457社)がメンタルヘルス不調をともなう私傷病に利用可能な休職制度等があると回答しました。回答時点でメンタルヘルス不調による休職者等が1人以上いた企業は、有効回答439社中66・3%(291社)でした。この結果より、多くの企業がメンタルヘルス不調による休職者等への対策が必要になっていると考えられます。 対策の実施にあたっては事業場外資源、すなわち企業における社員のメンタルヘルス不調の予防・改善や職場復帰を社外の立場から支援する機関を、企業または社員が利用する場合があります。その利用状況について調査した結障害者職業総合センター研究部門障害者支援部門事業主支援部門職場復帰支援の実態等に関する調査研究1 はじめに2 企業における休職者の実態および 休職中の措置について3 事業場外における職場復帰支援について※1本研究における事業場外資源は、主に医療機関、地域センター、従業員支援プログラム(EAP)実施機関の3機関を想定しています※2本研究におけるフォローアップとは、地域センターや医療機関が職場復帰支援終了後に復職者や復職者の所属する企業に対して行う、何らかの支援と定義しました※3本研究における通常勤務とは、図2の「企業における復帰時または復職後の措置」がすべて終了した状態と定義しました※4プログラムの内容は、復職者同士が交流する場の提供、心理教育や認知行動療法、レクリエーション等多岐にわたっています28

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