働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8雇用のもと、最大5人の方がパソコンを使ったデータ入力などの在宅ワークを行いながら、シェアハウスで暮らして生活の見直しを行い、自活につなげていくことができます。 今後は「自宅を離れての在宅勤務」という形のひきこもり者のサポートも、グループ会社で連携していければと思っています。 めちゃコマも設立して3年が経ち、ようやく黒字化を果たしました。現状はフロンティアリンクグループ内の案件が多い状態ですが、今後3年で社外案件の比率を7割程度まで高め、「ひきこもり者が安全・安心に自分のペースで長く働ける」という理念はそのままに、より一般の会社に近づけていくことができればと思っています。ひきこもり者の潜在能力に在宅とITが組み合わされば、可能性は無限にあります。みなさまのご支援を、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。佐藤 啓(さとう けい) 1973(昭和48)年、北海道生まれ。東京工業大学工学部電気・電子工学科卒業、米ワシントン大学経営大学院(MBA)修了。1996(平成8)年、「セイコーエプソン株式会社」入社、ソフトウェア部門にて6年間のエンジニア経験の後、会社派遣による2年間の海外留学を経て、経営企画部門にて新事業育成などを担当。同時期に東京工業大学非常勤研究員も兼務。2006年、「フロンティアリンク株式会社」を設立。2017年、「株式会社ウチらめっちゃ細かいんで」を設立。2019年、長崎県五島市に障害者の在宅雇用を推進する「株式会社ニュータイプ・ラボ」を設立。2020(令和2)年、同社代表取締役に就任。勉強ができる仕組みをつくればよいのではないか。在宅であれば、ひきこもり者の環境を大きく変えることなく、新しい一歩をふみ出すことができます。 多くのひきこもり者から聞くのは「働きたいけど外に出るのはつらい」ということだったこともあり、「ひきこもり者が安全・安心に働ける環境を、まずは在宅で用意する」ことを念頭に、2017年12月にめちゃコマがスタートしました。 めちゃコマが大切にしているのは「ひきこもり者が、安全・安心に自分のペースで長く働ける」ことです。設立した当初はひきこもり者の特性である「まじめさ」に頼ってしまい、納期の厳しい仕事などを詰めこんでしまった結果、スタッフの半数以上が同時期に離職してしまうという「会社存続の危機」を迎えたこともありました。 それ以降はスタッフの「安全・安心」を最優先し、メンタルケアに関する面談を定期的に実施したり、仕事のペースやスケジュールを本人の希望や体調などを考慮して柔軟に対応するなど、「長く安心して働ける」環境を構築してきました。 私自身、ひきこもり者は基本的にまじめで心やさしく、そして会社名の由来ともなっている「きめ細かさ」を持ち合わせている「職人肌」の人が多いと思っています。めちゃコマは現在30人ほどのスタッフが全員、完全在宅でホームページ制作やプログラミング講座の講師などIT系の仕事をしていますが、みなさんそれぞれのスキルを活かし、フロンティアリンクグループのIT部隊として、だれ一人欠かせない貴重な〝人財〞となっています。 一方で、めちゃコマには無料で登録可能な「サポーター会員」という仕組みがあります。現在登録者が3000人近くいるのですが、これらの方々にも在宅での仕事をお渡ししようとすると、さまざまな課題があるのも事実です。 仕事確保の問題もあるのですが、なかでも比較的多く耳にするのが「自宅がそもそも安全・安心な環境ではない」という話です。家庭環境などの問題で、自宅から離れてみたいが、仕事がなかったり、貯蓄の関係で行動に移すのがむずかしいというケースです。このような方向けに、グループ会社で長崎県五島市に本社を置き、障害者の在宅雇用などを支援する「株式会社ニュータイプ・ラボ」では、コワーキングスペース兼シェアハウスである「五島ベース」を2021(令和3)年6月1日に五島市内にオープンしました。ここではニュータイプ・ラボの安全・安心に自分のペースで長く働けるように3

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