働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8いたように思います。障害のある社員が増えてくるなかで、同じ社員として公平に働きやすい環境を、しっかり考えなければいけないと実感しました」そこで2018年、障害のある社員もいきいきと働ける職場づくりを目ざす「スマイルプロジェクト」が、康雄さんの音頭で立ち上げられた。同じころ、社内では長期経営計画で売上拡大の方針が示され、社員数も大きく増加していくことが予想された。2017年に大手自動車部品メーカーから人事部長として転職し、現在は管理本部長を務める堀ほり野の政まさ範のりさんは「社員数の増加にともない、法定雇用率を守っていくためには、障害者雇用の取組みを根本から見直す必要があると考え、当社の現状を詳しく調べることにしました。その結果、これまで障害者雇用を各拠点・現場主導で進めてきたことにより、その取組みにさまざまな差が出ていることがわかりました」と話す。グリーンテックの障害者雇用率は2014年に2・6%になったが、その後は増減をくり返し、2018年には2・1%と未達成状態に。その裏では、職場定着率が65%に低下していたという。実態調査と分析を行い、浮かび上がってきた課題は「障害者の働く環境整備が拠点任せ」、「(障害者を受け入れる)職場への理解活動が不足」、「2016年の障害者雇用促進法改正に未対応」などだった。一方で、近い将来法定雇用率が2・5%になることも想定し、増加する社員数に合わせて数十人の障害者の雇用が試算上で必要だとわかった。可能な採用人数や切り出せる業務などを拠点ごとに調査しつつ、他企業も訪問した堀野さんは、こう語る。「どの企業でも最初は、地道に業務をつくり出しながら時間をかけて進めていました。あらためて私たちも、着実に環境整備に取り組んでいこうと決めました」洗い出した課題や対策を整理し、2019年1月に「障がい者雇用施策アクションプラン」がまとまった。このアクションプランでは、合理的配慮などの内容を再確認し、相談体制の整備や障害者職業生活相談員の配置、外部の支援機関との連携強化をあげている。また、「経営者」、「人事担当者」、「受入れ部署」の役割についても明示。社員へのメッセージ発信や採用計画策定、採用活動、受入れ部署との調整、現場での教育訓練や労務管理などを分担してもらい、実行については障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などとの連携も提案している。同年4月には「障がい者雇用方針」を社内外に公表した。康雄さんは「それまで拠点ごとに進めていた職場環境の整備を、会社全体で一緒に取り組んでいこうという方針を、全社員に向けて明確に示しました」と話す。 具体的な整備は、管理本部内の「働き方改革推進プロジェクト」が担当した。堀野さんと、同プロジェクトの主査を務める村むら井い雅まさ人ひとさんに、プロジェクトのおもな内容を説明してもらった。【社内の周知と理解】社内向けに独自のガイドブックを作成。社内の障害者雇用率や障害者雇用納付金の推移、障害者雇用の目的、方針内容などをまとめた。各部署・拠点の責任者に向けた勉強会では、小テストを実施し90%以上の理解を図った。精神障害のある社員が増えている状況をふまえ、ハローワークから講師を招いた研修を役員クラスや部門長に向けて実施。2021年度は各拠点のマネジャー、職長、事務員クラスの研修も計画している。全社的な取組み推進管理本部長の堀野政範さん(写真提供:株式会社グリーンテック)働き方改革推進プロジェクト主査の村井雅人さん6

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