働く広場2021年8月号
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働く広場 2021.8【相談窓口の設置】障害のある社員だけでなく、職場の責任者からの相談なども受けつける「スマイルコール」を2019年7月に設置。働き方改革推進プロジェクト専用の携帯電話に直接つながる形となっている。「いろいろな方から電話が来て、必要性を実感しています。まず第三者としてじっくり話を受けとめることを大事にしています」と村井さん。聞くだけで済むこともあるが、社内で対応したり、外部の支援機関と連携をとったりしながら解決につなげている。【社内好事例の紹介】すでに障害者雇用を積極的に進めていた4拠点を調査し、好事例集を作成。ハンドブックにして社内関係者に配布したほか、拠点を回ってアドバイスもした。堀野さんは「事例の内容を外部機関に評価してもらったところ、じつはかなりよい取組みをしていることもわかり、自信を持って紹介できました」と語る。その一つ、富士営業所の事例では、取組み内容のほか、さまざまな気づきやアドバイスが紹介されている。例えば採用活動について、「積極的に支援機関とつながり、障害者雇用に関するセミナーにひたすら参加して情報収集と人脈づくりに奔走」、「結果として会社の知名度向上につながり、応募者も集まる」、「特別支援学校とのパイプは絶対に必要」などと助言。精神障害のある社員については「重要なのは『心の安定』であり、常に安心できる環境が一番望ましい。素を出せる環境が必要」、「取引先の言葉を悪くとらえ悩みはじめることもあるが、早期に大丈夫だと感じられるよう解釈の手伝いをする」といった気づきのほか、「身体障害のある社員を取引先に派遣してクレームが入ったときは、作業遂行能力を見てもらい、了承を取りつけたこともあった」など、エピソードも紹介。全体として「周囲も、障害のある社員のがんばりは刺激になり、支援をしてくれるようになった」、「作成したマニュアルがとてもわかりやすく、教える側のレベルも向上した」など職場内の活性化を伝えている。  社員のみなさんにも話を聞くことができた。まずは本社の人事部人事グループの山やま田だ晃こう史じさん(34歳)。就労移行支援事業所を経て2017年11月に入社した。以前は税務署などで短期就労をしていたが、人とのかかわりで苦労が多いことに気づき、病院に行ったところ、軽度知的障害と、身体の不調が続いてしまう身体症状症(※)の診断を受けたという。山田さんは「僕の場合は、知っている人がいるエリア内のトイレに行けないという症状があります」と明かす。トイレは、上司に告げたうえで別フロアや別棟を利用するが「事情をわかってくれている社員さんばかりなので安心できます」と笑顔で話してくれた。最近は、毎日服用していた胃腸薬を飲まずに済むようになり、突発的な欠勤もなくなっているそうだ。「最初のころは、指示されるたびに『できません』というばかりでした」とふり返る山田さん。いまではデータをエクセルにまとめる業務のほか、書類のチェック作業も担当している。「3行以上の文章を読解するのが苦手なので、仕事の手順を短文の羅列や表にしてもらったりしています。いまは音読しながら長い文章も理解できるようになってきました」と話す。コロナ禍で在宅勤務が増えたが、気がねなく音読しながら仕事のスキルアップに努めているそうだ。山田さんのサポートにあたるのは、人事部人事グループのグループ長を務める身体症状症への配慮人事部人事グループで働く山田晃史さん人事部人事グループ長の出水大介さん※ 身体症状症:自覚症状に見合った検査結果や医学的所見がないにもかかわらず,頭痛や吐き気・めまいなど身体の不調が長期間にわたって続く疾患7

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