働く広場2021年9月号
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働く広場 2021.9の気づきや、リラクゼーションスキルの習得・実践を支える重要な役割をになっています。例えば、身体感覚のモニタリングでは、呼吸法の練習を通じて、浅い呼吸と深い呼吸の違いを体感します。受講者は「浅い呼吸の時はお腹が膨らまなかったが、深い呼吸をするとお腹が膨らむ」、「ゆっくり息を吐くときに気持ちが落ちつく」、「心臓のドキドキが和らぐ」などを、感じ取ることができます。そのタイミングで支援者が日常的に呼吸に意識を向けることをうながすと、受講者は、自らの呼吸をモニタリングすることとなり、ストレスと呼吸の関係を発見するきっかけを得ます。あるいは支援者のフィードバックで気づく場合もあります。この体験から、浅い呼吸をストレスサインとしてモニタリングして、浅い呼吸に気づいたら、呼吸法を実践することが可能になります。 つまり、呼吸に関するセルフモニタリングが強化されると、ストレス・疲労に気づきやすくなるのです。ア 感覚プログラム 感覚プログラムは、三つのステップで構成されます。①まず個別面談において、感覚特性に関するチェックシートに回答してもらいます。その後、報告書に付属しているCDに収録されている感覚特性見える化シート(図2)を用いて不快や苦手さなどの感覚をグラフ化し、受講者と共有します。②共有した結果をもとに特性対処のヒント集(図3)を参考にして感覚の不快さを除去・緩和するための対処方法や対処 障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害のある方を対象とした「ワークシステム・サポートプログラム」を実施することにより、発達障害の特性に応じた的確な支援を行うための技法開発・改良を行っています。平成25年には、職場におけるストレス対処スキルの向上を目ざして、自らのストレス・疲労の状態を把握し、時々の状態に応じたリラクゼーション法を実践するトレーニングについて、支援マニュアル№10「発達障害者のためのリラクゼーション技能トレーニング ストレス・疲労のセルフモニタリングと対処方法」にとりまとめました。その後当該技法が、地域障害者職業センターをはじめとする障害者就労支援機関で活用されるようになるなかで、「セルフモニタリングがうまく機能しないためにトレーニング効果が出にくい方がいる」という声や「認知的なアプローチが必要な方にも対応できるような改良を希望する」という声を多数いただくことになりました。 そこで、セルフモニタリングを強化し、従来のリラクゼーション技能トレーニングの効果をより高める三つの新規プログラムを開発し、2020(令和2)年度末に実践報告書№36「リラクゼーション技能トレーニングの改良」としてとりまとめました。以下にその概要について紹介します。 改良したリラクゼーション技能トレーニングは、感覚、運動、認知(思考・感情)の三つのプログラムで構成されています。身体感覚、思考、感情に関するセルフモニタリングの強化を図ることでストレス・疲労への気づきを高め、ストレス・疲労に関する対処法の習得・実践をうながします(図1)。 このトレーニングにおいてセルフモニタリングは、ストレス・疲労へ障害者職業総合センター職業センターリラクゼーション技能トレーニングの改良発達障害者のワークシステム・サポートプログラム【技法開発・改良の視点】【三つの新規プログラムの概要】図1 リラクゼーション技能トレーニングとセルフモニタリングの関係28

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