働く広場2021年9月号
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働く広場 2021.9ツール、リラックス効果のあるツールやリラックスできる環境を検討します。③最後に、プログラム内で効果を検証します。イ 運動プログラム 運動プロブラムでは、疲れにくい姿勢(よい姿勢)づくりを目ざしながら、実際に体を動かし、筋肉の緊張や弛緩、体の傾き、疲労と姿勢との関係などの気づきをうながします。このプログラムでは、姿勢をよくする体操・運動(図4)を毎日実践することを推奨しています。日常的に身体を動かし、身体感覚をモニタリングすることで、身体的なストレス・疲労への気づきにつなげます。ウ 認知プログラム 認知プログラムでは、思考や感情と適切な距離をとることを学びます。例えば、身体感覚に注意集中する呼吸を行っているとき、思考や感情など呼吸以外の感覚に注意がそれたら、注意がそれた対象にラベリングを行い(例:鳥の鳴き声に注意がそれたときは心の中で「音」とつぶやく)、再び注意を呼吸にともなう感覚へと引き戻すトレーニングを行います。自分の意識にわきあがってくるさまざまな対象について客観的に観察することは、それ自体がセルフモニタリングの練習になります。 同時に、今自分が取り組んでいることに集中できれば、リラクゼーションの効果的な実施につながることが期待されるのです。 強い不安・緊張、感覚過敏、過集中の傾向があるAさんの事例(自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害) 感覚プログラムでは、自覚していた聴覚・嗅覚の過敏さ以外にも、一度に多量の文字を見ると気持ちが悪くなる、視線の移動に労力を要すなど視覚認知の特性があることがわかりました。そこで、拡大ルーラーの使用や書見台の高さをパソコンの画面に合わせ視線移動の距離を短くすることで作業にともなう疲労を大きく軽減することができました。 運動プログラムでは、「よい姿勢で作業に取り組むことで以前よりも疲れにくくなった」という実感が持てました。また、作業から注意が離れる休憩中に体を動かすことで、背中のコリなど身体的な疲労に気づけるようになりました。 認知プログラムでは、講習を通じてネガティブな印象を持つ感情にも役割があることを知り、「不安や緊張など自分が抱きやすい感情を悪いとは思わなくなった」との感想がありました。また、わき起こる思考や感情に評価・反応せず、ただ観察するというトレーニングを通じて、不要なエネルギーを使わない在り方を学びました。Aさんの事例では、各プログラムが提供する枠組みに沿って意識的にかつ継続的にセルフモニタリングを行うことによって、ストレス・疲労への気づきと効果的な対処方法の習得・実践が可能になったといえます。 実践報告書№36「リラクゼーション技能トレーニングの改良」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています(★1)。また、冊子の配付を希望される場合は、当職業センターに直接ご連絡ください(★2)。【リラクゼーション技能トレーニングの効果・実践事例の紹介】図2 感覚特性見える化シート図3 特性対処のヒント集図4 姿勢をよくする体操・運動29★1「実践報告書No.36」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice36.htmlよりダウンロードできます。★2 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html

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