働く広場2021年9月号
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働く広場 2021.9対話による「個」の成長が「組織」の成長へ〜障害のある人の「成長ステップ」見える化プロジェクト〜対話による「個」の成長が「組織」の成長へ〜障害のある人の「成長ステップ」見える化プロジェクト〜株式会社Connecting Point 代表取締役 株式会社CコネクティングonnectingPポイントointは、「障害」が、キャリアを積むうえで〝障害〞にならない社会の実現を目ざし、個を活かす障害者雇用の実践に取り組む企業のみなさまへの研修やリサーチ、コンサルティングサービスの提供を、おもな事業としています。当社が企画するプログラムでは、障害のある社員の声や存在感を感じられるコンテンツを重視し、本人参画型の障害者雇用の実践を大事にしています。 私が障害者雇用の現場において、当事者の声を尊重する姿勢を貫くきっかけとなったのは、オーストラリアにある王立メルボルン工科大学(現RMIT大学)大学院への留学経験です。この留学期間中に、障害のある人の声をもとに、ともに暮らし働くうえでの課題について、福祉サービスの提供事業者や必要なサービスを提供する民間企業も巻き込みながら解決を試みるNGO団体とともに、研究活動を行いました。この活動から、障害の有無に関係なく同じ地域で暮らし、同じ職場であたり前に働く「共生社会」の実現に向けて、障害のある人の困り感を社会との〝つながり〞のなかで解決する姿勢を学び、「Connecting Point」(異なる世界観を結ぶ〝つなぎ役〞)という社名の由来にもなりました。 日本に帰国した後は、就労支援の現場で経験を積んだ後、就労継続支援A型事業所・就労移行支援事業所の経営者として、大学院時代に描いた「共生社会」にどう近づけるのか、障害のある人を一つの会社で多数雇用することのむずかしさと、「共生社会」の意味をあらためて考えさせられました。そして、この経験から「共生社会」の実現に向けた具体的な解を導くべく、株式会社Connecting Pointを設立し、障害だけでなく、価値観や興味など、人それぞれが持つさまざまな〝違い〞に学び、〝違い〞を活かせる障害者雇用の実践に向けて各種プログラムを企画、実施しながら事業を継続してきました。今回は、2018(平成30)年より人材開発領域の専門家と産業・組織心理学の研究者の方々と開発を続けてきた「障害のある人の『成長ステップ』見える化プロジェクト」(以下、「PJ」)についてお話ししたいと思います。 PJは、障害のある人や障害者雇用に対する固定観念を払ふっ拭しょくし、「個」の活躍に焦点をあてた障害者雇用の実践を目ざし開発してきました。PJ開始当初の調査では、障害のある人の「思考特性」(職業的な興味や価値観)を可視化し、実際に従事する仕事と本人の仕事への興味が一致するほど、仕事への満足度が高まるという事実を定量的に明らかにしました(※)。その後、思考特性に加えて、ウェクスラー式知能検査(注)の知見をもとに、「働く力」の基盤となる認知機能に焦点をあてた専用ツール「認知機能の成長ステップ」(以下、「専用ツール」)「共生社会」の実現に向けて 障害のある人の「成長ステップ」見える化プロジェクト阿部潤子注: IQテストの一種。検査は被験者と専門家(臨床心理士など)の1対1で行われ、全般的な知能だけでなく、 「言語理解」や「ワーキングメモリー」、「処理速度」などの指数を得られる2

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