「働く広場」2021年10月号
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働く広場 2021.10ポートグループに配属されている。担当業務は、パソコンのデータ入力をはじめ各種封入作業、手荷物タグ制作、スカイテラス清掃、カフェ運営、給茶サービスなど多種多様だ。現場では以前から、障がいのある社員の見守り役として客室乗務員のOGなどからなるジョブサポーターを配置してきた。母親のような存在として社員を手助けしてきたが、昨年から「社員チームの自立」を目ざした動きが始まっている。そのきっかけをつくったのが、ジョブコーチとして指導にあたる町まち田ださんだ。JALサンライトの存在を知った10年前、希望してグループ会社の関西支社から出向してきた。最初は現場の課題対応にも苦労していたが、6年前にジョブコーチ研修を受けて「それまでは素人感覚でしたが、障がい特性をきちんと知っておくことがどんなに大事かわかりました。いまは『理解は支援、支援は理解』だと常に心にとめながら対応しています」と話す。あるとき、複数のジョブサポーターが個人的な事情で退職したことがあり、急きょ町田さんが見守り業務を代行したところ、「これは社員だけでもできるのでは」と気づいた。そこでまず、障がいのある社員のなかから5人をリーダーに選出し、彼らを中心に障がいのある社員だけでチーム(社員チーム)をつくった。リーダー教育を行い、チーム員も参加して「給茶マニュアル」を作成した。いまでは、社員チームだけで給茶サービスをしっかり行っている。2020年10月からは清掃業務でもリーダーを選出し、社員チームだけで行っている。ちなみに先日、障がいのある社員にアンケート調査を行ったところ、全員が「自分たちだけで仕事をして、よかった」と答えた。「仲間で協力すれば、できることがわかりました」といったコメントも寄せられたそうだ。実際の様子も見学させてもらった。現場は、天王洲ビル25階にある社員向けスペース「スカイテラス」。清掃業務を担当する社員チーム5人が出入口付近で輪になり、マニュアルを手に作業内容を確認し、200席以上ある広いテラス内に分散して、それぞれ担当するテーブルやいすなどの清掃にあたっていた。このチームでリーダーを務めている武たけ内うちさん(27歳)は、2013年に入社。リーダーに抜てきされたときは「初めての経験でできるのか不安でしたが、実際にマニュアルを作成しながらリーダーの仕事も覚えたので、スムーズでした」と笑顔で話す。リーダーになってからは、周囲に指示を出しながら全体を見渡し、困っていそうな社員の助けに入るようにしている。たいへんだったことをたずねたところ、「作業内容についてチーム員の負担にならないか配慮したり、言葉遣いに気をつけたり、苦労もあります。でも、責任がともなうことで、やりがいも感じています」と答えてくれた。目下の目標は、もっと自信を持って指示を出せるようにすることだそうだ。リーダー会も月に2回開催されている。この日は、新型コロナウイルス感染予防対策で使用する手袋の種類について話し合っていた。「このポリエチレンの手袋は、装着しやすいのですが、脱げやすいんですよね」、「ゴム手袋の場合は…」などと意見を出し合い、最後は多数決を取っていた。参加していた佐さ藤とうさん(41歳)は2002年に入社。佐藤さんは、それまでの社会経験を買われ、以前から給茶サービスの事実上のリーダー役を務めてきた。「コミュニケーションの取り方などに悩むこともありましたが、町田さんやジョブサポーターのみなさんに相談しながら学んできました」と話す。昨年から正式にリーダーが5人になり、負担はずいぶん減ったというが、一方で「リーダーによって仕事のやり方も考えも違うので、統一できるよう、情報共有も含めた定期的な会議は大事です」と気を引き締める。職場にはアビリンピック経験者もいる。2020年入社の細ほそ井いさん(19歳)は、同年11月に開催された第40回全国アビジョブコーチの町田さんリーダーを務める武内さん作業前、リーダーを中心にミーティングが行われるリーダー会の様子。各リーダーが意見を出し合う8

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