「働く広場」2021年10月号
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働く広場 2021.10リンピックの「喫茶サービス」種目で銅賞に輝いた。特別支援学校時代から腕を磨いてきた細井さんは「大会後は、職場でも『おめでとう』と声をかけてもらい、カフェ業務の担当も増えました」とうれしそうに話す。「先輩たちがいつもやさしく教えてくれるので、ほかの業務でも自分の力を伸ばせるよう、しっかり学んでいきたい」と意欲的だ。 JALサンライトでは、「障がい者の当事者視点」を活かしたグループ会社へのサポート事業も強化している。以前から、空港でチェックインやゲート業務を行うグループ会社の社員研修で、お手伝いを希望されるお客さまの移動方法についてアドバイスを行っていたが、最近は、空港関係の他社が参加する勉強会にも参加している。さらに「株式会社ジャルパック」と共同で、車いすユーザーのための旅行ツアーも企画中だ。これまではおもに顧客から依頼されてアレンジしてきたが、今後は新たに商品として売り出す予定だという。代表取締役社長の宮坂さんは、「こうした企画に当事者として参加することの意義は大きい」と力を込める。「もともと旅行好きなJALサンライトの社員たちは、海でのダイビングも楽しむなど、私たちの予想よりはるかに行動的だと知りました。ほかにも、さまざまな障がいのある社員の意見を取り込みながら、これまで応えきれていなかったニーズも旅行プランに反映させていくつもりです」 宮坂さんは就任当時から「まだまだ社員の能力を発揮できそうな事業があるはず」と思いながら、天王洲ビルやテクニカルセンター内を自ら歩き回ってきた。そのうちに新業務として見出されたのが、すでに受託していた客室サービス訓練施設(モックアップ)での補助業務に加え、救難訓練施設に設置された訓練用ドアハンドルや消火器などの消毒作業だ。これまでは教官たちがやっていたが、JALサンライトの障がいのある社員にトライアルで任せたところ、現場では「私たちが忘れそうな部分まで気を配って正確にやってくれる。自分たちの作業を見直す機会にもなる」と好評で、業務化が決まった。さらにいま準備中の業務が「シューシャイン(靴磨き)」。これも社内公募で提案されたものだが、ネイルサロンのときとは違って、社内では異論も多かった。そこで、イギリスのロンドンで開催された「世界靴磨き大会」で優勝した長は谷せ川がわ裕ゆう也やさんが経営する店舗の動画を紹介して、いまや憧れの職業でもあり、障がいのある社員の集中力を発揮しやすいと説明し、イメージを高めてもらい、社内理解を得ることができたと宮坂さんはいう。現在は長谷川さんに月2回来てもらい、選抜された障がいのある社員約10人が指導してもらっている。コロナ禍の対応も考慮しつつ、年内をめどに天王洲ビル内で、JAL社員向けにサービスを始める予定だ。「研修中の社員たちは、相当高いレベルまで上達しています。一般の大会にも出場してスキルを磨いてもらいたいですね。将来、空港のラウンジでお客さま向けにサービスを提供することができたらいいなと思っています」と明かす宮坂さん。最後に、JALサンライトの今後の方針についても語ってくれた。「JALサンライトの障がいのある社員たちは、JALやグループ会社社員とともに同じ職場で業務を遂行したり、当事者として指導したり、意見をいえたりする機会が増えることで、JALに貢献しているという実感がわき、ますます意欲的になっているのがわかります。その気持ちが、さらに職場を活性化してくれます。今後は、もっとふみ込んで、JALのお客さまにより近い場所でも、障がいのある社員が活躍できる機会を増やしていけたらと考えています」グループ会社との連携新たな職域「シューシャイン」会議室の清掃作業を行う細井さん客室サービス訓練で使用するアイテムの準備や片づけ作業(写真提供:株式会社JALサンライト)リーダーを務める佐藤さん全国アビリンピックで銅賞を受賞した細井さん9

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