「働く広場」2021年10月号
25/36

しました。障害者にとって「働く」という人生の大事なことにかかわるには、もっと専門性がある方がよいと思いましたし、専門性があれば社内で発言するときに、障害のある社員の状況をしっかり伝えられるのではないかと考えました。 最近は、例えばこだわりが強く、仕事がうまくいかない社員と話すときなど、自分の思いやアドバイスをうまく伝えられるようになったと思います。こんなときには、資格取得までの学びを実務で活かせていると感じます。城 専門的な学びをしていると、たとえ上司に対しても、迷わずに正しい知識をしっかりお伝えできます。個別支援では、対人関係や家庭の事情もからんで不安定になり、退職を希望してきた社員との面談で、何がいちばんしんどいのか、どうしたら仕事を続けられるのかを掘り下げ、退職を回避できたのはよかったです。 また、社内で、「精神・発達障害のある方のことがよくわからない」といわれたときに、精神障害の発病の経緯や発達障害の特性をお伝えしたり、知り合いの精神科病院を見学させていただいたこともありました。思春期に発病し、長期間病院生活をした人の、社会経験の少なさなどを実感してもらい、彼らへの理解の参考にしてもらいました。なるまでの精神的な負担も大きく、本人も周囲もかなりエネルギーが要ります。弊社の場合、業務内容や社内の雰囲気が合うかどうかのマッチングと、それ以上に現在勤めている社員と協調しながら働けるかを重視しており、ありがたいことに早期退職者はほとんどいない状況です。網代 実習やハローワークの「トライアル雇用」を活用しています。その人の得意なところで力を発揮できるようにマッチングの精度を高めることを目ざしています。しかし、2週間程度の実習では、少々きつくてもがんばれてしまう人もいて、就労してからミスマッチが発覚することもあります。そんな場合でも会社としては採用責任があるので、できることはすべて手を尽くします。そこで私たち専門職は、その人が持っている力を発揮できる環境を整え、その人に合った適切なサポート方法を考えます。 ただ、私たちの支援では支えきれない場合もあり、そのときは、本人にとっても別の道に進んだ方がいいのかもしれないと悩むこともあります。網代 実は私は今年の3月に資格を取得五味渕 専門職で知識があると、障害者からの発信に注力してしまうこともありますが、あくまでも事業部との中立な立場を保ち、ビジネス視点を持ちつつ、ご本人が活躍できる場をつくれる調整力が必要だと感じます。その連携のための情報共有が大事だと思っています。網代 個人に向き合うときは、自分の価値観で判断するのではなくて、その人にとって何が大切なのかを考え、それを尊重しながら、しっかりと向き合うようにしています。それと同時に企業の一員として外してはならないことがあるので、その両立が必要になります。このバランス感覚が、この仕事にはとても大切だと思っています。三鴨 入社してから、いろいろな準備が足りないとか、体調悪化で離職する方もいると思いますが、どのような対策を取っていますか。冨賀 まず採用の段階で、長く定着して働けるかどうか、会社と本人双方の見きわめが大切だと感じています。入社してから合わずに辞める、そして再就職活動をするといった流れは、自信喪失や落ち込みを経て、また前向きに進めるように定着支援についてMHSW専門性の発揮働く広場 2021.1023

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る