「働く広場」2021年10月号
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す。強制ではありませんが、支援機関がつくことのメリットを、ご家族にも説明しています。もちろん、社内でも支援はしていますが、外部支援者だからこそ、相談しやすいこともあると思います。網代 外部支援機関がついていると、会社と本人のやり取りの齟そ齬ごがあったとしても、あとからうまく通訳をしてくれたりするメリットが大きいかな、と思います。五味渕 トラブルが起こったときに、第三者の視点で、本人、家族、医療との交通整理をしてくれるのが、会社としても安心だと思います。三鴨 理想はそうですが、支援機関が会社を誤解していることも……。一同 ありますね。冨賀 弊社の採用は支援機関がついていることが必須条件ではありませんが、最近は支援機関がついている方の入社が多いです。それは、ご自分の障害受容や、配慮事項の整理を支援機関で行っている方が多いからだと思います。また、グループホームから通われる社員など、生活支援は支援機関や世話人さんがやってくださるケースもあります。 ただ、会社に対して支援機関のリクエストが過剰だと、会社は対応が困難になります。私は外部と内部双方での支援経験から、会社と支援機関それぞれが役割門知識とともに経験をふまえたお話などを伝えていくことも大事だと、今日みなさんのお話からあらためて感じました。城 弊社の入社の条件の一つに、1日7時間勤務ができることがあります。前職は支援機関で精神障害のある人の就労支援をしていました。症状や薬の副作用で、疲れやすさや朝の起きづらさによりフルタイム勤務が難しい人もいます。そのような視点では、入社までの壁が高いな、と感じることもあります。 いま、高齢になってきた社員で7時間勤務がきつい人が出てきました。離職しないで済むように、体力に配慮した業務の切り出しがむずかしいと感じています。五味渕 本人の希望を叶えると、会社に負荷がかかるケースは当然あります。どちらを優先させるかではなく、いかに妥協点を探すかがむずかしいです。専門性を活かした定着支援グループを、特例子会社の仕組みのなかでどう運用していくべきかを考えているところです。城 支援機関のついていない社員もいま五味渕 専門職の社員は、さまざまなバックグラウンドがあり、社内で起こることの予測の可能性の引き出しをたくさん持っていると感じます。事業部門からは専門的な意見を求められることもありますので正確な情報を伝え、理解してもらいながら関係構築につなげていくことが必要です。冨賀 障害のある社員が求める合理的配慮について、管理職の方から「これは障害特性から必要なのか、単なる甘えなのか」といった質問にアドバイスするときなど、専門性が活かせていると思います。私はもともと資格がないまま障害者支援の仕事を始め、働きながら資格を取得しました。資格取得のきっかけの一つに、障害のある方から「資格がない人のアドバイスは聞きません」とはっきりいわれたことがあり、資格があることで信頼され、相手に支援が届きやすくなることもあると感じています。 また、障害者支援において、特に距離感の取り方は重要だと思います。構築した関係が依存関係になってしまうと、自立をうながせず就労が安定しないといった、悪い結果につながることもあります。支援経験を積んでわかってきたことも多いのですが、これからさらに精神・発達障害のある方の就労が進むこともあり、専企業の都合、個人の都合のバランス支援機関との連携働く広場 2021.10あしすと阪急阪神の城さんは、相談窓口のMHSWとして、社員のさまざまな悩みの相談に乗っている(写真提供:株式会社あしすと阪急阪神)スミセイハーモニーの冨賀さんは、自立を妨げず成長につながる支援に取り組んでいる(写真提供:株式会社スミセイハーモニー)24

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