働く広場2021年11月号
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働く広場 2021.11重要だ。社内に散在する7人のジョブコーチは、週1回の定例会のほか、大小のトラブルや課題が発生したときは随時、手の空いたジョブコーチが集まって相談し合いながら改善を図っている。「コロナ禍のいまも、チャットツールなどをフル活用して情報共有しています」と、山口さん。メンバーが毎日記入する日報は、所属長や大本さんともメールで共有している。大本さんは全員分に目を通し、少しでも異変を感じるとジョブコーチに連絡を入れる。日ごろから状況を把握している大本さんは、ジョブコーチたちにとってなんでも相談できる存在でもあるそうだ。日報では、睡眠時間や家庭での過ごし方も確認し、業務に影響があるようなら助言する。「例えば、家で洗濯の手伝いが入浴後で、就寝が遅くなっている場合などは、業務に影響するため改善法を一緒に考えます」と、村田さん。合理的配慮については専用シートを用意。「自分の障害を自身で理解し、自ら伝えること」を目的とし、障害について、得意なこと、やってみたいこと、障害をカバーするための工夫や努力していること、職場で配慮・支援してほしいことを記入してもらう。成長とともに変わる部分もあるため、シートは3年に一度更新する。このほかメンバー向けにビジネスマナー&コミュニケーション研修、一般従業員向けには障害特性理解の勉強会なども開催している。近年は精神障害のあるメンバーが増えたほか、社内のストレスチェックに対応するため、職場に2人の精神保健福祉士がいる。その一人がジョブコーチの村田さんだ。自ら通信制学校に通って2016年に資格を取得した。村田さんは「メンバーの通院や主治医との面談に同行するようになり、産業医との橋渡し役として情報交換もしています。よりふみ込んだ連携と支援ができるようになりました」と効果を実感している。また、ジョブコーチの連携は社外にも広がっている。大本さんが現在副会長を務める公益社団法人全国障害者雇用事業所協会(全障協)のつながりから、兵庫県内の企業16社で働くジョブコーチ約30人が年3回ほど集まり、情報交換や勉強会などを行っている。持ち回りの職場見学や、障害者職業センターから講師を招いての研修会、改善事例の発表会などを通して、工夫を取り入れ合ったり悩みを相談し合ったりできる貴重な場となっている。 日本パーソネルセンターでは人材育成の一環として、2009年からアビリンピックへの挑戦にも力を入れてきた。これまでに延べ136人がデータ入力や喫茶サービス、製品パッキングなど7種目に出場し、20人が全国大会出場を果たしている。2013年からは「社内競技会」も実施してきた。アビリンピックで入賞を逃した従業員からの提案だという。当初は3種目(データ入力・オフィスアシスタント・喫茶サービス)にしぼった。2014~2019年は一般の従業員も参加していたが、人数の増加などで開催日の確保がむずかしくなり、2020年からはメンバーのみの参加となった。その代わりに運営はメンバーが中心となり、新たにメンバー同士の交流会も企画。種目は製品パッキングと帳票作成(初級・上級)、プチブロック(細かい作業工程を通して実個数と理論在庫を確認するもの)など6種目に増えた。1人2種目まで挑戦でき、参加者は過去最高の49人にのぼった。ジョブコーチの山口さんは「以前はアビリンピックに尻込みしていたメンバーも、社内競技会を機に、出場したいと意思表示できるようになっています。競技では、私たちが気づけなかった力も発見することがあります」と話す。その一例が、重度の知的障害のあるメンバーで構成する清掃チームだ。あるとき大本さんの提案で、毎日少しずつパアビリンピック挑戦と社内競技会2020年に行われた全国アビリンピックに兵庫県代表として出場した釣つる井い一かず史しさん(写真:官野 貴)2019年に行われた社内競技会で行われた「喫茶サービス」種目8

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