働く広場2021年11月号
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働く広場 2021.11ソコンを学ぶ時間をつくり、翌年の社内競技会でデータ入力に挑戦してみたところ、2人が1位、2位に輝いた。いまは清掃業務に使う消耗品の発注・納品の記録を自分たちでこなすほか、社員向けのメールも作成・送信している。 日本パーソネルセンターの人材育成は、社外にも広がっている。きっかけの一つは、入社後に漢字が書けるようになったメンバーがいたこと。大本さんは「できることはまだまだあるはず。就労指導や訓練段階で、より実践的で仕事に役立つ支援をしてほしい」と思っていたそうだ。ちょうど近くに特別支援学校が移転してきたのを機に、2013年から同社社員が校内カフェ実習の指導役としてサポートしている。さらに2015年からは兵庫県教育委員会や地元の企業・団体と共同開発し、特別支援学校の生徒たちの技能をはかる「兵庫県特別支援学校技能検定」を実施している。これには兵庫県内の特別支援学校卒業生の就職率が、2013年度に16・6%と全国ワースト2位(全国平均28・4%)を記録し(※1)、特別支援学校卒業生の就職率アップという目標もあった。検定は現在、「喫茶サービス」、「ビルクリーニング」、「パソコン」、「物流・品出し」の4種に分かれ、習得内容によって1級~10級に認定。同社は喫茶サービスを担当し、細かいマニュアルやクリアすべき作業項目などを設定した。大本さんは、検定試験によって、次のような効果を確認できたという。︿生徒﹀安全に道具を扱い、手順通りに作業する力が身につくとともに、緊張しながらも1人で検定に挑戦することを体験できる。働く意欲が高まる。︿保護者﹀学校と連携しながら、家庭でのサポートがしやすくなる。︿教員﹀次の目標に向けた指導の展開や、指導方法の充実・改善を検討しやすい。︿企業﹀認定級を確認することで、本人の実力を客観的に把握できる。実際に就職率も上昇し、2020年度卒業生の就職率は過去最高の26・2%(※2)だ。大本さんは「生徒の就業スキルが向上しただけでなく、私たち企業側も、本人が実際にどういう仕事ができるのか具体的に判断し、採用しやすくなっていると感じます」と話す。 日本パーソネルセンターの業務は、ほぼグループ会社からの請負だが、年々、コストを問われるようになってきていると大本さんはいう。「他社と比較した場合の品質・サービスのよさや納期厳守をポイントに、適正価格で受託できるよう努力し続けています」また、これまではグループ会社内でのみ行っていたコーヒーマシーン清掃業務だが、一般企業の職場などに置かれているUCCコーヒーマシーンの同業務の受託も目ざすなど、さらに事業の拡大も検討している。もともとUCC社員が担当してきた業務を同社が請け負うことで、UCCの業務効率化にもつながると期待されている。一般企業の職場に出向くため、業務に求められるスキルのハードルは上がるが「これを機にメンバーが新たな能力を開花させ、業務の幅を広げられるようにうながしていきたい」と力を込める。さらに同社内でも、コロナ禍を機に、部署間の業務の融通やメンバーの派遣など、柔軟に仕事がシェアできるよう試行錯誤もしているところだという。今後の方針について、大本さんが語ってくれた。「私たちはグループをサポートする会社であり、なにより人の成長を大事にすることは変わりません。メンバーが自立しながら職場の戦力となっていくために、これからも、一人ひとりが目標を持って努力できるような職場づくりを目ざしていくつもりです」自立しながら戦力に特別支援学校との連携兵庫県特別支援学校技能検定での「喫茶サービス」の様子現在、社内で行われているコーヒーマシーン清掃の様子※1 文部科学省「学校基本調査」(平成26年度)※2 兵庫県教育委員会「令和2年度 特別支援学校高等部卒業生の就職状況について」9

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