働く広場2021年11月号
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働く広場 2021.11第6回第6回コロナ禍を乗り越えて コロナ禍を乗り越えて ~新しい働き方を問う~~新しい働き方を問う~ 新型コロナウイルス感染症の流行にともない、テレワークなどの新しい勤務形態が導入されるなど、企業や働く人々の就労環境は大きく変化しています。そのなかで、障害者就労支援機関には、どのような対応や工夫が求められたのでしょうか。今回は、障害者の就労支援に取り組む「特定非営利活動法人さらプロジェクト」にお話をうかがいました。クローズクローズアップアップ監修:本誌編集委員 松爲信雄(東京通信大学教授)新型コロナウイルスの感染拡大から約1年半。この間に、多くの業種や職種でテレワークの導入が進められるなど、私たちの働き方は大きな転換を求められました。その波は、障害のある方の就労支援にあたる支援機関にも影響を与えています。東京都内と神奈川県内の計四つの事業所で、おもに精神障害・発達障害のある方を対象とした就労移行支援などに取り組む「特定非営利活動法人さらプロジェクト」。同法人が運営する就労移行支援事業所「さら就労塾@ぽれぽれ」(以下、「さらぽれ」)では、2020(令和2)年4月の一回目の緊急事態宣言以降、WEB会議システムなどを使用した在宅での訓練も交えながら支援を行ってきました。下北沢事業所職業指導員の志し村むら吉きち之の輔すけさんは、「訓練生にパソコンを貸し出し、在宅訓練時も『自己理解プログラム』や『パソコンスキルの訓練課題』、面接練習といった『就職準備』などの通所時の訓練とほぼ同じ内容の課題を進めてもらっています。また、さらぽれでは、『消耗品の発注』など、事業所を運営するために必要な事務作業を、実務訓練として訓練生が担当しているのですが、こちらも在宅で可能なものは継続し、さらに、『ホームページ掲載用のブログ記事の作成』など、在宅でできる作業を新たに加えることもしてきました」と語ります。オンライン環境でのやり取りを、この在宅訓練で初めて体験する訓練生も多く、最初は戸惑いも多かったそうです。また、直接顔を合わせて表情などを確認する機会が減ることで、不安や不満などのメンタル面のフォローが遅れることもありました。「WEB会議で、朝礼や一日のふり返りの時間を設けたり、一日一回以上のオンライン面談を実施するなど、顔を合わせる機会をしっかりと設けることで、そういった声も減っていきました。初めは不安が大きかった訓練生も、オンラインでもよい訓練を提供したいという職員の思いを受けとめて、前向きに取り組んでくれて、続けていくうちによりよい訓練に変化していったと思います」と、秋葉原事業所職業指導員の飛とび内ない峻しゅんさんは話します。在宅訓練に慣れるにつれ、訓練生には次のような変化が見られたそうです。「これまでは受け身だった人が、『面談をしてほしい』、『手が空いているので、どうしたらよいのか』といった声を自分からあげるようになるなど、訓練生の主体性に変化が見られました。また、チャットやメールなどを利用せざるを得なくなったことで、わかりやすく人に伝えるためのコミュニケーションスキルが向上した人も多くいました。一人きりでの作業を初めて経験することで、そのような環境が向いているのかどうか、自己理解が進んだ例もありました」と飛内さん。さらに、支援にあたる職員にとっても、新たな気づきや支援方法を考える機会になったそうです。「メールやチャットを通じたコミュニケーションが増えたことで、訓練生一人ひとりの得意・不得意や、テレワークへの適性などをアセスメント(評価)する機会になったと思います。一方で、オンライン環境の場合、『訓練のプロセスをていねいに見ることができない』、『やり方や作業の進め方を教えにくい』などの課題もあり、対面でのつながり特定非営利活動法人さらプロジェクト(東京都豊島区)◆事業内容 ・ 就労移行支援事業所「さら就労塾@ぽれぽれ」の運営 下北沢事業所(東京都世田谷区)、池袋事業所 (東京都豊島区)、秋葉原事業所(東京都台東区)、 横浜事業所(神奈川県横浜市)の4事業所・ 杉並区立ゆうゆう館受付運営受託、協働事業・各種講習、講師派遣         ほか◆沿革 ・ 2000年9月設立総会、2001年3月特定非営利活動法人認証・ 2007年10月「さら就労塾@ぽれぽれ」事業開始【取材先プロフィール】試行錯誤しながら取り入れた在宅訓練10

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