働く広場2021年11月号
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などの若者を対象とした自立支援にまで広がっている。 企業における障がいのある人への相談体制は専門家による評価やプランニングによる充実が進められている。「合理的配慮」、「LGBTQ」など、相談者や内容が今後も多様化していくなかで、専門職と当事者の参加による相談体制の確立は急務と考える。スミセイハーモニーでは、ここでも委員会と同様に、各部課長が職員とダイバーシティ推進室のつなぎ役として活躍している。 最後に、本誌編集委員で埼玉県立大学保健医療福祉学部教授の朝日雅也さんは、「社会福祉現場における就労支援サービスのあり方」(※)のなかで、「福祉から雇用へというと、とかく『働かせる』という論理が前に出てくるが、『働かせる』というのは支援者側や政策側の論理に陥りやすい。そうではなく、『働きたい』と思うことを支援するのが就労支援の本質である」と述べている。 朝日さんが指摘している「働きたいと思うことを支援する」が、障がいのある人の就労支援にかかわるすべての人たちが共有する倫理観、価値観になるよう、私も取材を続けていきたい。 今回、インタビューに快く応じてくれた職員みなさんの表情や言葉のなかに、「スミセイハーモニーで働きたい」という気持ちが溢れていた。というのも、私が勤務する大学では毎年、社会福祉士や精神保健福祉士の実習指導やインターンシップ、企業訪問や面接に備えて多くの時間を割き、マナーに関する個別指導を行っている。その理由は、マナーを知らない、または、どうしたらよいのかわからない学生が多く、マナー教育を行うことが避けられないという現状だからである。障がいのある人のなかにも、「知らない」、「わからない」、「そのことを表現できない」などの理由から、マナーだけではなく、ルールを理解することができない状況に陥っていると予測される。 マナーとは「お互いが気持ちよく過ごすための心遣い」であり、「日常の挨拶」や「心遣い」によって「人と人が理解し、支えあうことができる」と考える。スミセイハーモニーが取り組んでいるマナー教育は、職員として、人としての成長にはマナー教育が不可欠であることを今回の取材で痛感した。 また、今回は取材することができなかったが、スミセイハーモニーには社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、手話通訳士など、国家資格を有するスタッフで構成された「ダイバーシティ推進室」が設置されている。 近年、地域の相談体制の充実は著しく、学校などでも取り組まれるようになり、就労支援に関しても高校生や大学生が仕事能力とマネジメント力を備えた人材に成長できる「場」、「組織」になっていると感じた。 2つ目のテーマ「4つの委員会の役割」は、すべての職員が会社全体を理解することや、仕事能力の向上が図れるよう、その推進役としての役割を委員会がになっていることに尽きる。また、仕事能力プラス「人」としての成長も委員会の役割の一つとしてとらえられる。例えば、委員会メンバーは各部長の推薦により選出され、いろいろな部署の職員が協力しながら日常業務から離れた活動を展開している。この出会いや活動を通して、職員一人ひとりが常識を備え、他者を気遣う社会人としても成長できる、スミセイハーモニー独自のキャリアアップを、この「4つの委員会」がになっているといえよう。 「4つの委員会の役割」をキーワード的に整理すると、①職場活性化委員会は「相互理解」と「支えあい」、②職場環境向上委員会は「マナー」、③職場コミュニケーション向上委員会は「コミュニケーション」、④従業員代表者委員会は「働きがい」となる。 これらのキーワードは、読者のみなさんの職場における雇用や、具体的な職場定着の取組みのチェック項目として、参考になるのではと思う。 なかでも私は「マナー」に着目した。働く広場 2021.11職場活性化委員会メンバーの田中美由樹さん電子化を終えた書類の整理を行う田中さん職場活性化委員会の委員長を務める坂本義仁さん※ 公益財団法人特別区協議会「社会福祉リカレント講座」資料、2009年25

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