働く広場2021年11月号
31/36

働く広場 2021.11した。① 職業基礎能力に関する課題:本人の能力に応じた仕事内容の設定、職場の人間関係、指示理解等のコミュニケーションや作業速度、労働意欲等の課題、等② 精神的側面等の支援を要する課題:精神的ストレスへの対処や体調の不安定さや外部機関の活用等の課題、等③ その他、障害種別に特徴的な課題:視覚障害…「視力が落ちた」⁄肢体不自由…「運動機能が落ちた」、「無理なく働ける勤務時間の設定」、「歩行や交通機関を使用した場所の移動」⁄内部障害…「無理なく働ける勤務時間の設定」⁄精神障害…「長期休業した場合の職場復帰の対応」 中高年齢障害者を雇用している多くの企業で配慮を実施しても残存している課題について、対応できていると考えられた4社の雇用管理担当者および在職中の中高年齢障害者ならびに退職者とその家族を対象としたヒアリング調査を行いました。その結果、4社に共通して障害者本人と企業の対話の姿勢による仕事に対するモチベーション維持を基礎として、職業基礎能力や精神的側面への外部機関の活用の課題へのさまざまな取組みが確認できました。① 仕事に対するモチベーションの維持:課題状況には個別相談で本人の気持ちもふまえ丁寧に対話し、働きやすい職務内容、職場環境、年齢障害者において障害種にかかわらず多く行われていた配慮として、「職場における障害についての理解促進」がありました。中高年齢以前から重要であった配慮だけでなく、加齢による障害の進行等や周囲の異動等の職場環境の変化などもふまえた継続的な職場での理解や配慮の促進も含むと考えられます。また、「業務実施方法のわかりやすい指示」、「休暇や勤務中の休憩等の休養への配慮」、「産業保健スタッフによる事業所内の健康管理」も障害種にかかわらず比較的多いものでした。③ 障害種別の配慮:①、②に加え、障害種別に特徴的な配慮がありました。具体的には、視覚障害者に対する「視力の変化についての状況把握」、聴覚障害者に対する「職場内での聴覚障害に対する筆談・口話の配慮」、肢体不自由者に対する「トイレ等の改善」や「職務環境における作業施設の改善」、知的障害者に対する「業務遂行援助者の配置」、「作業を容易にする構造化」、「残業(時間)の制限」、精神障害者に対する「短時間勤務による勤務時間の配慮」などでした。(3)中高年齢障害者に残存していた課題 一方、これらの配慮を行っても、中高年齢障害者で職業上の課題が残存しているとした企業は、身体障害者については2割でしたが、知的障害と精神障害については4割以上となっていました。残存課題には、職業基礎能力に関する課題と精神的側面等の外部機関の支援を要する課題に加え、障害種別に特徴的なものもありま待遇を一緒に検討して構築すること② 仕事内容の工夫の推進:目標管理シートや業務マニュアルでの仕事内容や働き方の確認、本人と確認しながらの業務負担軽減の検討、支援機器等③ 健康管理の充実:定期的面談での体調等の確認、腰痛予防体操やストレスチェック等、休憩時間での社員と本人の対話等、専門病院でのチェックや受診時間の調整④ 外部機関の活用:就職前に利用していた支援機関での相談、家族関係の変化に対応したグループホームによる生活支援の円滑な利用、ジョブコーチと連携した配置転換 企業においては、特に知的障害や精神障害のある労働者の中高年齢化に対し、障害のある労働者との丁寧な対話をベースにして、「職業生活再設計」というスタンスで、職務や職場環境の見直しだけでなく、健康管理や生活管理等の課題にも外部機関を効果的に活用し取り組むことが重要です。ポイントをマニュアル(図2)(※)にまとめていますのでご活用ください。※ https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai73.html からダウンロードいただけます◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)3 まとめ2 企業と障害者のヒアリング調査から図2 事例からみた中高年齢 障害者に対する職業生活 再設計のポイント29

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る