働く広場2021年12月号
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働く広場 2021.12館たて野の綾あや子こさん(41歳)は、10年ほど前に脊髄小脳変性症を発症した。歩行時のふらつきなど運動機能に障害があるため、それまで働いていた都内の会社を退職。その後、2014年に車通勤ができるグリーンサービスに入社した。「『仕事を通じて成長することで自立する』というスローガンにも共感しました」と話す。グリーンサービスには、車いすを利用する社員にも安全な通路幅と勾配角度を持った緊急避難用スロープが設置されている。車輪つきステッキを使って移動する館野さんは、東日本大震災時に都内で帰宅困難になった経験などから「緊急避難用スロープはとても安心できます」という。また、日ごろはデータ入力などを担当しているが、目が疲れやすいため、1時間に1回程度、休憩室などで休めるのも助かっているそうだ。新入社員の指導員も務める館野さんは、「仕事のやり方は人によって違うので、自分のルールを押しつけないこと、メモを取る時間の確保、そして点ではなく線になる教え方を心がけています」と語る。自分が指導した社員が職場に定着して活躍する姿を見るのが、喜びとやりがいにつながっているそうだ。湯ゆ浅あさ麻ま寸す美みさん(46歳)は2017年、ハローワークで見つけた求人票をきっかけに入社した。希望していたパソコンの仕事ができること、すでに精神障害のある社員がいたことが決め手だった。また、お腹を壊しやすいことから、苦手な電車ではなく車通勤を許可されたこと、職場のフロアに個室トイレが五つあることも安心材料だったそうだ。最初の3カ月間は館野さんが指導員としてつき、「ずっと隣の席にいてくれて、何でも聞きやすくて、本当に安心できました」とふり返る。また、毎日提出する日誌に役職者がコメントをつけてくれ、「自分のことをきちんと見てくれている人がいるのも、仕事のやりがいにつながっています」と話す。これまで一番うれしかったのは正社員になれたことだという。グリーンサービスでは、入社時は全員が嘱託社員で、勤怠状況や仕事内容に問題がなければ1年後から正社員になる仕組みだ。 個人情報の取り扱いが厳しいグリーンサービスでは、コロナ禍でもリモートワークや在宅勤務が不可能だった。代わりに徹底した新型コロナウイルス感染防止策で乗り越えてきたという。パーティションや消毒コーナーの設置などの設備対策はもちろん、発熱や濃厚接触によりPCR検査を受けた社員がいたら、本人のいる職場を徹底的に消毒した。また、職場内で1人目の陽性者が出たときは、周囲の席の社員を自宅待機させた。さらに備えとして、拠点の全社員用PCR検査キットも用意した。そしてコロナ禍の当初から導入していたのが、基礎疾患や37・5℃以上の発熱があった社員を対象にした「無制限の特別休暇」で、すべて有給扱いだ。結果としコロナ禍の苦労と対応国立職業リハビリテーションセンターを参考に設置された緊急避難用スロープ館野さんはデータ入力などを担当している千葉業務部の館野綾子さんトイレ番号が点灯し使用状況を知らせる。これは不測の事態への備えにもなっている8

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