働く広場2021年12月号
11/36

働く広場 2021.12て、昨年1年間の出社率は平均7割だったが、なかには3カ月間休んだ社員もいた。小野寺さんは、「出社する社員が不公平感を抱くかもしれないと少し心配していたのですが、実際はそういう声がまったく出てきませんでした。基礎疾患のある社員のことをこんなに理解してくれていたのだと実感できました」と語る。現在は、特別休暇は年間20日間までと制限を設けている。今後の課題は、やはりテレワークのあり方そのものだと小野寺さんはいう。「業務の性質上やむを得ないとはいえ、コロナが完全収束するかはわかりませんし、テレワークは時代の流れです。採用の幅が広がることも間違いありません。金融業界全体の課題として、他行とも情報交換しながら解決策を模索中です」 コロナ禍のなかで、うれしいニュースもあった。グリーンサービスの東日本人事部に勤務する村むら山やま浩ひろしさん(47歳)が、東京パラ五輪のバドミントン競技で見事、銅メダルに輝いたのだ。村山さんは8年前の2013年、ハローワーク主催の合同面接会を経て入社。バドミントンはプライベートで週末などに練習していたという。3年前に強化選手に選ばれたことから、グリーンサービスでは、勤務を週2日にし、遠征時の旅費などをサポートした。「職場全体で応援し、すごく盛り上がりました。村山さんが職場に銅メダルを持ってきてくれて、みんな首にかけてもらって『重いねえ!』などと喜びを分かち合いました」と、小野寺さんが話してくれた。 グリーンサービスを取り巻く金融業界は、大きな過渡期にある。ペーパーレス化が加速度的に進むことで、業務内容も変わりつつあるという。ただ目下のところは、親会社の三井住友銀行から委託される業務量は増えている。理由は、三井住友銀行やグループ会社が組織変革などで人員を減らしており、その分の業務がまわってきているからだ。グリーンサービスにとっての課題は、高いレベルの業務や、短い納期が設定されたものが増えていることへの対応だという。「難易度の高い業務を、いかに社員たちにフィットさせていくか。負担感を抱えこまないよう、バランスも考えながら試行錯誤していきます」と話す小野寺さんは、その先も見すえている。「将来的には、三井住友銀行から出向してくる社員も減っていくと予想されます。そうなるとグリーンサービスの社員が、さらに主体的に業務を動かす組織が求められていくでしょう。社員の育成が、より重要になってきます」一方で2017年からは、グリーンサービスの社員の三井住友銀行への出向も始まっている。同年から三井住友銀行の頭取を務める髙たか島しま誠まことさんが、就任直後にグリーンサービスを見学し、「これこそダイバーシティ実践の場だ」と感銘を受けたのがきっかけだという。いまは身体障害のある社員2人がそれぞれ2年間の予定で出向中だ。就業支援カウンセラーが三井住友銀行側にフィードバックをしながら、障害者雇用やダイバーシティにかかわる考え方の共有も図っている。小野寺さんも、親会社の新任部店長向けの「ダイバーシティ・マネジメント研修」で、グリーンサービスの取組みなどについて話している。三井住友銀行を中核とするSMBCグループは、2020年、障害者の活躍推進に取り組む国際ネットワーク組織「The Valuable 500」(※)に加盟した。ダイバーシティを推し進める実践現場の一つとして、グリーンサービスの取組みがますます期待されている。ダイバーシティ実践の場社員がパラ五輪で銅メダル千葉業務部の湯浅麻寸美さん社内での報告会で、同僚から祝福を受ける村山浩さん(写真提供:SMBCグリーンサービス株式会社)※The Valuable 500:世界最大規模の障害者雇用促進を目ざす、企業および経営者のネットワーク組織9

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る