働く広場2021年12月号
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働く広場 2021.12方で業務を整理していたことが、スムーズなテレワークの導入にも役立てられたということでしょう。 ーー清掃など、テレワークがむずかしい第3群の業務では、どのような工夫ができるのでしょうか?松爲 第3群の業務に従事するのは、おもに知的障害のある人です。この分野は、現場での作業が多いため、一般的には、在宅勤務などのテレワークで実施することはむずかしいと考えられていますが、第4回に登場した「サントリービジネスシステム株式会社」の事例では、知的障害のある社員にも一般の社員と同じようにテレワークを実施した取組みが紹介されました。テレワークの実施にあたっては、全業務のなかから在宅でも可能な仕事を抽出したり、テレワークに対応できる新規業務を開拓したりするなどの工夫をしています。 第5回に登場した「株式会社ドコモ・プラスハーティ」では、自宅待機と出勤を織り交ぜ、1日、または1週間単位での交代制勤務を導入することによって、オフィスビル清掃の業務の継続と、自宅待機時の知的障害のある社員のモチベーションの維持や心身の健康管理などを両立する工夫をしています。ていねいなコミュニケーション機会を設定することで、自宅待機時の不安を軽減し、生活リズムを整えることも重要なポイントとなりました。 これらの事例に共通するのは、知的障害のある社員にも、テレワークや交代制勤務などの新たな経験にチャレンジさせようとする企業の姿勢です。障害者雇用に対する企業の姿勢が、このコロナ禍でより顕著に現れたともいえるでしょう。 ーー変化する雇用環境のなかで、支援機関や障害のある人に求められることも変化しているのでしょうか。松爲 第6回で登場した障害者就労支援機関「特定非営利活動法人さらプロジェクト」の事例からは、支援機関でもさまざまな模索をしながら、コロナ禍に対応している様子がうかがえました。就労支援においては、在宅で訓練を行うなどの工夫が必要になると同時に、テレワークを交えた働き方への支援も求められるようになってきています。そのようななか、精神障害や発達障害のある人にとっては、マイペースで業務にあたることができるテレワークにメリットを感じることも多いようですが、不安になったり、苦手と感じる人もいます。そのため、在宅時の生活リズムの整え方、環境整備の方法、メンタル面のサポートなども、重要な支援となってきています。 これまでの6回の連載を通じて、障害者雇用においても、テレワークなどの新しい働き方に対応せざるを得なくなっている状況が見てとれます。企業には、テレワークが可能な業務の切り出しのほか、テレワーク関連の新規事業を広く開拓することも求められるようになりました。そして、障害のある人も働き方の変化に対応することが必要となってきています。一方で、テレワークになじまない人に向けた新たな仕事を、どのようにしてつくり出していくかについても、今後の大きな課題となっています。 コロナ禍で得られた学びを、障害のある人の働きやすさやスキルアップにつなげていけるよう、企業と支援機関、そして障害のある人本人の努力と協力が、よりいっそう求められるようになってくると思います。図 障害者雇用モデルと求人者群総合職一般職業務職一般部署採用集合部署採用高低雇用吸収力高業務難易度第1群第2群求人者類型障害者雇用モデル第3群軽作業第Ⅰ層第Ⅱ層第Ⅲ層現業系監修者作成企業姿勢が問われる結果に今後、求められること11

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