働く広場2021年12月号
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田嶋 まさに、その通りです。ワーカーズコープの目的や原理・原則が全面的に反映された、私たちにとっては待ちに待った法律です。 この法律の第一条で、「生活との調和」を図るワークライフバランスを保ちつつ、「意欲及び能力に応じて就労する」ディーセントワークの「機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ」たうえで、その解決に向けて労働者協同組合は、①「組合員が出資し」(出資原則)、「それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ」(意見反映原則)、「組合員自らが事業に従事する」(事業従事原則)ことを基本原理とすること②「多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業」を推進して、「持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする」こと とされています。松爲 つまり、ワーカーズコープは、ディーセントワークやワークライフバランスの達成に向けて、障害を含む多様な背景のある人たちが参加するのですね。労働関係の諸法律のもとで権利が保護されつつ、自ら出資し、その主張・意障害のない人も大勢います。こうした多様な人たちが、障害の有無、性別、年齢などの障壁を超えて、「協同労働」の理念に賛同して参加しているのです。 また、同連合会の事業規模は350億円程度ですが、そのうちの6割が「介護・福祉関連」と「子育て関連」の2大事業です。そのほかに、総合建物管理、公共施設運営、若者・困窮者支援、協同組合間連携、販売・売店、環境緑化関連、配食サービス、運輸・交通、建築・土木、食・農関連、廃棄物処理、講座関連、一次産業・循環関連などが全国の事業所で展開されています。松爲 どうして、こんなに多様な事業が展開されているのですか。田嶋 先ほど述べた協同労働の目的や原理・原則を大切に事業を広げてきました。協同労働という働き方に到達するまでに、40年にわたり試行錯誤を重ねてきた歴史が反映されています。 協同労働の初めは、1970年代の失業対策事業の後処理的な仕事から始まりました。1980年代に欧州からワーカーズコープの概念を導入するとともに、病院清掃や建物総合管理、生協や農協などの物流センターの仕事が取り入れられるようになりました。2000(平成12)年に介護保険制度が始まるとホームヘルパー養成講座や介護事業が起こされ、2003年の地方自治法の改正で指定管理者制度が導入され、民営化・市場化が推進されると、コミュニティ施設、学童保育や児童館、保育園などでの子育て事業や、高齢者・障害者などが利用する公共施設の管理運営が始まりました。その後、児童の放課後等デイサービスや就労支援事業所なども展開してきました。 さらに、2015年に生活困窮者自立支援制度が始まると、さまざまな社会的困難や生きづらさを抱えた人たちを対象として、病院清掃や物流現場、子育て支援から若者支援、高齢者ケアまで、あらゆる事業領域に「ともに働く」取組みを広げてきました。また、2011年の東日本大震災を契機に、被災地や被災者主体の仕事おこしなどの事業も展開してきました。松爲 社会全体の動きと一体化して次から次へと新たな仕事(事業)を拡大してきているんですね。ワーカーズコープの姿がしだいに見えてきました。松爲 そうした活動の歴史での最大のトピックが、2020(令和2)年12月に成立した「労働者協同組合法」ですね。労働者協同組合法の成立働く広場 2021.1222

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