働く広場2021年12月号
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働く広場 2021.12りだ。就業支援カウンセラーは、採用面接や実習にかかわるほか、各拠点を巡回しながら社員面談や役職者とのミーティングなどを通じ、一人ひとりに目を向けた支援を行っている。小野寺さんは「つねに中立の立場でバランスをとりながら、会社と社員の間の、通訳のような役割を果たしてくれていると感じます」という。2016年に入社し、東日本人事部に所属する臨床心理士の佐さ藤とう雄ゆう太たさんも、こう話す。「本人の言動の裏にある意図や状況、努力してきた部分について、そのつど役職者に理解してもらえるよう説明しています。また逆に、会社側が期待していることや職場の方針などを、本人や就労支援機関にも伝えています」佐藤さんからのアドバイスを参考にしている1人が、取締役で東日本人事部の部付部長を務める金かな井い隆たかしさんだ。2019年に出向してきた金井さんは「行員としての職歴が長すぎて、『行員の常識は、世間の非常識』を痛感します。社員のいい回しに疑問を持ったとき、『それは銀行員の目線ですよ』と指摘されて、初めて気づいたこともありました」と明かす。社員の労務管理などを担当しているが、職場では「何でも話しやすい、マイナスな情報ほどいち早く伝えてもらえるような雰囲気を心がけています」という。  グリーンサービスの就業支援カウンセラーは、メンタル面だけでなく、社員自身の目標設定や、チームのまとめ方など、キャリア面での支援も強化している。その土台となっているのが、5年前から本格的に始めた社員研修だ。小野寺さんは「じつは、それまで社員研修と呼べるものがありませんでした。不定期に新入社員が入ってきても就業規則などを1時間ほど説明するぐらいで、役職者も前任者から口頭で引き継いでいました」とふり返る。前代表取締役社長の角すみ純じゅん平ぺいさんが「社員主体の会社に変えたい」という方針を示し、「社員の成長なくして会社の成長なし」をスローガンに、2016年、「新入社員研修」と「新任役職者研修」、「ジョブリーダー・サブリーダー研修」をスタートさせた。さらに2019年から実施している「コミュニケーションスキルアップ研修」は、役職がつかない中堅層の社員が対象だ。企画した佐藤さんは「本当の目的は、一人ひとりが働き方のセルフデザインをすることです」と説明する。研修では「現状の職場」と「よりよい職場」のギャップを縮めるために、自分ならどういう働き方をするか、何ができるか、という問いかけをし、自分らしい活躍を目ざすヒントを得る。一連の研修を通じて、社員の意識が変わり、職場に予想以上の好影響が出ていると佐藤さんは話す。「社員からの相談が、以前は対人関係をめぐるものが多かったのですが、最近は仕事のあり方や将来のキャリアについての内容がとても増えました。他人に向けたメンタル面での悪循環よりも、自身について考えられる環境になったことが、職場全体にさまざまなプラスの効果をもたらしていると実感しています」 2016年には「職場ミーティング」もスタートした。これは社長を含めた役員と4、5人の社員が会議室に集まり直接対話するというもので、全社員が必ず年1回参加する。「社長はどんな会社にしたいのかを聞きたい」、「経営陣のビジョンを語ってほしい」といった意見や、「もっと努力が報われるようにしてほしい」、「公平な評価がほしい」といった率直な要望職場ミーティング社員の意識を変えた研修取締役で東日本人事部部付部長の金井隆さん東日本人事部、臨床心理士の佐藤雄太さん6

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