働く広場2021年12月号
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働く広場 2021.12もあり、突っ込んだ議論になることもあるそうだ。役員が、自身の考え方や会社の方向性などを伝えるよい場になっていると感じる一方、社員も日ごろの思いを直接伝えられるほか、社員同士で「こんなことを考えていたのか」と刺激を与え合う場にもなっているという。 社員研修や職場ミーティングなどにより、社員主体の意識が浸透しつつあるなか、「社員主体で運営する会社にふさわしい人事制度とは、どういうものなのか」にスポットがあたるようになった。そこで、代表取締役社長の小野寺さんが陣頭指揮をとって進めたのが「人事制度改革」だ。まず、以前からあった、障害のある社員向けの「ジョブリーダー」と「サブリーダー」という役職について、登用基準があいまいだったことから、2018年に全社統一の登用基準を設定。さらに2019年の人事制度改革では、業務を取り仕切る「ジョブグループ長」、銀行OB社員と同等の職責と権限を持つ「次長」や「副部長」、「部付部長」という役職を新設した。職能給等級による昇給制度、役職に期待されることなども明文化し、一人ひとりが目ざせるキャリアアップの姿を明示した。リーダー以上の役職を希望しない社員には、等級制限のないサポート社員として、「ジョブスタッフ」や「指導員」(一人に対して期間は3カ月間)という役職もつくった。高い業務スキルを持ち、チームを支える役割だ。この人事制度をしっかり運用するために、役員たちが年に2回集まって全社員の評価をしている。本人の勤怠状況や成長ぶりを協議し、その結果については担当部長が社員一人ひとりに面談でフィードバックする。小野寺さんは、「社員の将来像を明確に描くことで、『現在はここにいて、将来はこうなる』という道筋を示せたことに大きな意義がありました。面談でも、自分への評価や期待について建設的な話ができるようになりましたね」と手ごたえを語る。現在はジョブスタッフ43人、サブリーダー38人、ジョブリーダー25人、ジョブグループ長7人、そして次長1人が、障害のある社員だ。 グリーンサービスの千葉業務部で働く社員3人にも話を聞くことができた。2001年入社の張はり替がえ誠せい司じさん(41歳)は、地元の聾ろう学校を卒業後、職業訓練校での面接会を経て入社。いまでは金融犯罪を防止するための業務にかかわるほどのベテランだ。職場には簡単な手話ができる社員も増えてきたが、張替さん自身は、唇や口の動きで読みとることに慣れていたため、あまり手話は使っていない。ただ最近のコロナ禍でマスクを着用するようになったため、口もとや表情を読みづらくなったことがつらいという。「みんなが嫌がる仕事ほど、やりがいを感じます」と話す張替さんは、不得意なことでも、スキルアップにつながると思って引き受けているそうだ。手話通訳を介したインタビューのほかに、事前に書いてくれたメモも紹介したい。「会社の方針に、『社員が主役』というのがあります。社内にはさまざまな障害のある社員がいますが、考えていることは同じだと思います。『かわいそうだとか特別扱いしないでくれ』と。長年、障害とともに生きていれば、それが普通になりますから。みんなが力を合わせてやっていくには、『相手の立場』になって考える、行動することが大事だと思っています。みんな違って、みんないい仲間です」「仕事のやりがい」を語る社員人事制度の改革千葉業務部の張替誠司さん張替さんは捜査機関からの口座情報の照会に対応している7

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