働く広場2022年1月号
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働く広場 2022.1掃や除草作業のほか、製造にかかわる業務などを行っていたが、指導員がメンバーの習熟度などを見きわめ、繁忙期を中心に、各事業部の製造現場にあくまで“お手伝い”として行ってもらった。ただ、各事業部に行ったり戻ったりをくり返すため、一人ひとりの仕事内容が安定しないのが悩みだった。そこで、最終的に各事業部へと配属される形にもっていくための人材育成カリキュラム「業務サービスグループビジネスモデル」が、2019年からスタートした。採用前から入社後5年間程度を目安に、実習を重ねながらマッチングを見きわめつつ、職務能力も段階的に高めていく仕組みだ。順を追って紹介していきたい。 〈採用前実習期〉滋賀事業所では定期的に、高等養護学校の1年生を対象にした職場見学会を開催している。その後、学校推薦を受けた2年生と3年生を、1~2週間ほどの職場実習生として受け入れ、適性を見きわめながら採用につなげていく。一般採用の場合も必ず事前に実習を行っている。業務サービスグループで実習生指導も担当している寺てら島しま俊とし恵えさんによると、特に力を入れて教えているのは“安全意識”だという。「製造現場においては、何よりも安全が優先されます。自分のささいな行動が、いかに人命の危険や会社の損害につながるかを、作業のなかで『これが“不安全”な行動だよ』などと教えます。学校側には、あまりピンときていない先生も少なくないので、日ごろから企業の考え方を理解してもらうようにしています」と話す。先生たちと協同で「企業紹介ビデオ」も制作した。そのなかでは、求める人材について「報(報告)・連(連絡)・相(相談)ができる人」、「ルールを守れる人」、「どんな仕事でもまじめにがんばれる人」などと伝えている。 〈会社適応期〉入社後5年間は、業務サービスグループに所属する。特に1年目は、仕事上の基礎知識や社会人として大切なモラルやルール、安定して働くための体力づくりなどを身につけながら、環境整備や事務補助、各事業部からの委託作業を行う。業務サービスグループで指導するジョブコーチの木きの下した伸のぶ史ふみさんによると「在学中の職場実習なども経て、一定の基礎力をつけてきているメンバーが増えており、日々の業務は比較的スムーズに取り組めています」とのことだ。製造現場からの委託作業については、対象品を預かって業務サービスグループの事務所内で作業し、“納品”する形をとっている。薩摩さんが説明する。「納品時にはメンバーが事業部に出向き、社員とやり取りするなかで、職場のコミュニケーションやマナーなども自然に身につけていきます」事業部から委託される業務の確保は、2015年から指導員を務める中なか川がわ淳じゅんさんが一役買っている。長年、製造現場でつちかった経験と人脈を活かしながら現場と交渉しているそうだ。4月の採用後2カ月間ほど各種の業務・委託作業のジョブローテーションをした後は、本人の得意・不得意などをふまえたうえで、指導員らが一人ひとりの「支援計画書」を作成する。日々の業務や座学研修などで社会適応能力を高めながら、基礎的な作業の訓練を重ねていく。そして11月ごろからは、現場へ派遣し約2週間の工場実習に参加する。業務サービスグループの指導員が毎日現場を回りながら、本人と現場のフォローをし、受入れ側の支援担当者はメンバーの「安全意識」最優先の指導から事業部の委託作業で基礎作業実習朝礼や実習などで使用する業務サービスグループの事務所入社1年目、基礎作業実習に就く中村裕人さん端子台へのラベル貼り作業を行う中村さん8

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