働く広場2022年1月号
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働く広場 2022.1重ねてきたそうだ。作業机の上には、はんこの日付を確認する試し紙を目の前にまとめて掲げておいたり、数字を書き込んで伝票に挟むメモ用紙をつくったり、だれでも代わりに作業できるよう道具や書類をわかりやすく整理している。今後の目標について聞くと、「ほかのみんながやっている、部品を仕分ける作業など、新しい仕事を覚えたいです」と話してくれた。指導員の中川さんは、「以前、作業机の上は文房具などが散乱し、ホッチキスを探すのにも苦労したほどでしたが、奥村さんがきれいに整理してくれて、作業も格段にしやすくなりました」と目を細める。また、薩摩さんは「奥村さんは、もともと字を書くのが苦手でしたが、順次導入されつつあるタブレットへの移行で負担が減り、業務自体に力を発揮してくれると期待しています。時代が彼女に追いついたような感じです」と話してくれた。 業務サービスグループの指導員たちは、派遣先の現場で、メンバーを支援する社員たちのフォローも欠かさない。指導員の宮元さんは、「支援担当の社員には、普段の仕事に加えて、負担がかかるかもしれないことを承知のうえで提案することもあり、悩むことも少なくありません」と明かす。グループ長の薩摩さんも、「双方が過度のストレスなく働ける環境をつくることが課題の一つです。支援する側の社員がまいってしまうようではいけないので、困ったときはいつでも何でも相談してもらえるような関係を大事にしています」という。業務サービスグループでは、派遣先の上長や支援担当者に、月1回の定例ミーティングを行うほか、障害者雇用に関する知識・スキル向上を目的としたオンライン研修の受講もうながしている。さらに年2回、各事業部の支援担当者が集まり「合同ミーティング」も開催。指導員からの事例発表やメンバー紹介のほか、初めてメンバーを受け入れた部署の担当者に対して、受入れ歴が長い部署の担当者から、経験談を交えたアドバイスをするなど意見交換の場にもなっている。 「最近は、事業部内での職域拡大が進んでいることがうれしい傾向です」と薩摩さんは語る。もともと派遣先のメインは製造現場だったが、設計や管理などの事務的な業務に就くケースも増えてきているという。業務サービスグループの取組みが広がるにつれ、現場も受入れに慣れ、メンバーの能力が認知されるようになった結果のようだ。ある職種専任型社員になったメンバーは、外部の取引先への商品発注や交渉の補佐を担当、パソコン2台を駆使して業務に取り組んでいる。また、近年中に職種専任型社員を目ざすメンバーは、定型の手順を設定してもらうことで、海外にある関連会社とのメールのやり取りまで担当できるようになっている。こうした業務はパソコン操作が必須のため、「高等養護学校にも、パソコン授業の充実をお願いしています」と、薩摩さんはいう。今後の展開も見据えて次のように話してくれた。「現場のデジタル化などが進むことで、むしろメンバーも作業に加わりやすい労働環境になってきていると感じます。業務のやり方しだいで、さらに職域が広がっていくのではないかと考えています」ダイフクグループ全体としては、今後も積極的に障害者雇用を進めていく必要があるという。大規模で多様な製造現場を持つ滋賀事業所は、引き続き、生産性を高める人材を育成する場として期待が寄せられている。事業部内での職域拡大も受入れ現場との連携職種専任型社員の奥村理果さん奥村さんは、工場へ納品される部材の受入れを担当している整理整頓が行き届いた作業机はだれもが使いやすい11

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